シングルボーイ下位時代

しょっぱいドルヲタが細々と喋ります

ハロヲタに聞いて欲しい”非ハロプロソング”5曲。

 

 

こんばんらぶりんっ♡(重低音)

 

ハロ発DDの成れの果て、チェる・ゲバラ(@Aruiteru_4329)でっす。

 

お初の方は初めまして!

いつもの方は毎度あざっす!

 

相も変わらずのヲタブログですが、懲りずにせっせと書いていきやす。

 

さて!

 

今回はブログタイトルのとおりハロヲタに聞いて欲しい非ハロプロ曲」を5曲紹介していこうと思います。

 

100%思い付きの本企画ですが、一応ハロー出身かつハロ外のアイドルも浅~く見てきた僕なりに、「普段ハロ以外のアイドルソングをあまり聞かないハロヲタの方」や、逆にアイドルソングはよく聞くものの、あまりハロプロには詳しくない」という方に向けて、それぞれの良い部分をピックアップしつつ、両者の興味の幅を広げられる内容にできればと思います。

 

ということでここからは、

 

タイトルのとおりハロヲタに聞いて欲しい非ハロプロ曲」を5曲紹介しつつ、さらに各楽曲に対応させる形で「この非ハロ曲が好きなら、きっとこのハロ曲も好きなはず!」という非ハロヲタ向けの逆オススメも紹介していきます!

 

それでは、あまり前書きが長くてもアレなので早速いってみましょうッ!

 

 

 

 

f:id:ChelGebara:20190529005053j:plain

(何度見ても狂おしいほど好きな画像) 

 

 

【非ハロ①】『ディスコ列島浮世の夢/FES☆TIVE

www.youtube.com

 

名前の通りお祭り騒ぎの楽しい作品が多いFES☆TIVE楽曲の中でも、他とは少し違った色を持っているのがこの「ディスコ列島浮世の夢」です。

 

ハロヲタ的には「作詞・児玉雨子の名前でピンと来るかと思いますが、本作でも「ぐちぐちネットりやめてよ いのちが湿気(しけ)るぜ」「滅茶苦茶娑婆駄馬駄駄馬(めちゃくちゃシャバダバダダバ)」「ちゃんちゃらおかしく意気て往きたいネ」など、硬軟自在の雨子節が躍動しています。

 

初期から続くハロプロ精神の根幹的アイコン・ミラーボールをしっかり備えたMVは、メンバーが一切出演していないという異色の作品で、こうした奇を衒った作りにも天邪鬼チックなハロイズムに通ずるものを感じます。

 

前述した雨子節に加え、純和風のお祭り騒ぎを臭わせる効果音が要所要所に入りつつも、決して情報過多で暑苦しくなることなく、全体を通して軽やかなディスコナンバーに着地している点が個人的にとても好きな一曲です。 

 

それでは続いて、この「ディスコ列島浮世の夢」が気に入った方にオススメなハロプロ楽曲をご紹介します。

 

 

 

 

 

 

【ハロ①】『スカッとMy Heart/モーニング娘。15』

www.youtube.com

 

ハロプロが誇る「涼しいファンク」の代表格、モーニング娘。15'(※)の「スカっとMy Heart」。

 

(※モーニング娘。は2014年以降からグループ名に年数が付きます)

 

爽快にハネるメロディに乗せて、日々の不満や自己嫌悪を次々と歌い飛ばしていくこの曲の展開は、聞いていてひたすら「気持ちいい」の一言に尽きます。

 

また「ほめてほめてよ ほめまくってよParadise」に代表されるような印象的なフレーズが前へ出がちですが、そうしたワード群をトータルで俯瞰すると、どこまでも「人間」を歌っている歌詞が現れることに驚きます。

 

これだけ痛快なエンタメ性に富みながら、その実歌詞の中身はひたすらリアルでどこまでも等身大な「人間」という対比に、ハロー楽曲ならびに、つんく作詞の懐の深さを改めて感じられる名曲だと思います。

 

 

 

 

 

【非ハロ②】『幸福ご飯/Lily of the valley』

www.youtube.com

 

ハロプロのオススメ曲2つ目は「Lily of the valley」の「幸福ご飯」です。

 

この曲、きっとタイトルを見た時点でニヤッとしたハロヲタの方も少なくないのではないでしょうか。

 

というのも、上記「スカっとMy Heart」の紹介文でも書いた通り、ひたすら地に足をつけて「人間」のことを歌っているハロプロ楽曲では、人間を人間たらしめる”衣食住”の要素がよく登場するのですが、中でも特に人間の趣味趣向を落とし込みやすい『食』の要素を表現するためか、歌詞内にたくさんの食べ物が登場します。

 

 

matomeldo.doorblog.jp

 

(ちなみに僕の好きな食べ物歌詞は「糸島Distance」の「ごぼてんうどん」です)

 

ハロプロ好きな方ならとっくにご存知かと思いますが、この食べ物歌詞、一見くだらないおふざけのように見えて実はとても重要で、歌詞に出てくる食べ物が何かによって曲の雰囲気が良くも悪くも一気に変わるのが、不思議なハロー楽曲の魅力だと思います。

 

ザ☆ピース!」の明るい雰囲気にピッタリな「デリバリピザ」や、「食欲すごく落ちてる ケーキが二個っきゃ入んない」という伝説のパンチラインを生んだ「付き合ってるのに片思い」、更には謎のエロさすら感じる「イジワルしないで抱きしめてよ」での超絶矛盾ワード「さっぱりスイーツ」などなど、ハロプロ楽曲における印象的な食べ物歌詞は挙げればキリがありません。

 

そんな話を意識しつつ上記リリバリの「幸福ご飯」を聞いてみると、これが実に味わい深く感じられます。

 

また過去のハロプロ楽曲の例から見ると、いわゆるラブソング的な歌詞がまだ身の丈に合わない幼いメンバーが、こういった食べ物にフォーカスした楽曲を歌うとこれが凄く合うんです。

 

それも単に食べ物への想いを無邪気に歌うだけでなく、好きな料理への気持ちを恋愛的な隠喩として歌詞の隠し味に仕込んだりと、キャッチーなフックから実に様々なアプローチへと繋げられる、多様な可能性に溢れた飛び道具こそ「食べ物歌詞」だと僕は思っています。

 

そんな飛び道具を見事に使いこなしてるように感じたのでこの曲を選びました。

 

きっとハロヲタの方のセンサーにも反応するものがあるのではないでしょうか。

 

ちなみに「年下に母性を感じたら終わり」が信条の僕ですが、宮丸くるみちゃんだけはノーカンです(集中線)

 

 

 

 

 

【ハロ②】『主食=GOHANの唄/THEポッシボー

www.youtube.com

 

続いて、上記「幸福ご飯」に並べてオススメしたいハロ曲(※)は「THEポッシボー」の「主食=GOHANの唄」です。

 

(※「主食=GOHANの唄」は、ポッシボーのメンバーがハロプロエッグを卒業となり、アップフロントからTNX所属へと変わる前に発売された曲であるため、ここでは便宜的に「ハロプロ曲」と表現しています)

 

こちらもタイトルから清々しいまでに「食べ物歌詞」全開な一曲で、その中毒性あるメロディと衝撃的な歌詞からつんく♂の変態曲」というハロプロ内の偉大なジャンルの一端を担っています。

 

MVに出てくる「細い銀縁メガネ」や「リバイバル調の聖子ちゃんカット」といった要素に、当時つんく♂時東ぁみとガッツリ組んでいた影響が色濃く感じられますね。

 

(ちなみに筆者はその頃スクラン見てました)

 

 

 

 

 

【非ハロ③】『Galaxy Dance Dance!/マリオネッ。』

www.youtube.com

 

ハロプロのオススメ曲3つ目は「マリオネッ。」の「Galaxy Dance Dance!」です。

 

「『楽しい音楽』と『宇宙な世界観』は美川憲一とキツツキくらい相性が良い」というのは、Earth,Wind & Fireの時代から続く絶対的な方程式ではないでしょうか。

 

科学の進歩により宇宙の解明が進んだ現代においても、ファンク、ディスコブーム全盛にあった7~80年当時から見た「宇宙の神秘」といった、謎が多かったからこそ生まれた『未知と憧れの象徴』のようなキラキラした宇宙のイメージが、今だに時代の空気感として生き続けているからこそ、こうして色んな楽曲の歌詞内に表現され続けるのだと思います。

 

そして本作「Galaxy Dance Dance!」も多分に漏れず、止まらないワクワク感と跳ね回るロマンチシズムを、宇宙を思わせる数々のフレーズで表現した、実にポップで煌びやかな一曲です。

 

過度に意表をついたワードを入れなくても、耳馴染みのあるフレーズだけで最後まで聞かせられるのは、歌詞と歌詞の繋ぎ方や語感を整えながらの言葉遊びがキレイにハマっているからだと思います。

 

 そんな訳で『楽しい!×宇宙!』枠として、この曲をオススメさせていただきます。

 

 

 

 

 

【ハロ③】『流星ボーイ/Berryz工房

www.youtube.com

 

さてさて、再びハロ曲のターンです!

 

上記の通り、黎明期にファンク・ディスコの影響が強く見られたハロプロには、立ち上げ当初から「宇宙」を思わせる楽曲が多く存在し、それが一種の「ハロプロらしさ」として認められ、20周年を超えた今も、そのエッセンスが色濃く受け継がれているように感じます。

 

そのため上記「Galaxy Dance Dance!」に続き紹介する、いわゆる「宇宙枠」の楽曲についても、アレコレソレ…と、とにかく選択肢が多く、何を挙げるか最後まで迷いました。

 

そして最終的に選んだのは、現役時代に「アイドル界のアベンジャーズと評された最強の個性派集団、Berryz工房の「流星ボーイ」です。

 

この曲については前準備も予備知識も要らないのでまずMVを見てください。

 

ドヤ感とめどない冒頭の宇宙表現からテレ東臭が強すぎるメンバーの登場。

 

そこから流れ始めるメロディーは、ハロプロ創世記を彩り、その屋台骨を作り上げた伝説のコンポーザー、ダンス☆マンのテイストがこれでもかと際立った珠玉の一品。

 

また余談ですが、こういう映像表現上の効果音が楽曲に乗るMVって個人的に大好きなんですよね。

 

YouTubeが栄えた現代においては「MVをフックにして、MV以外の形で楽曲に触れて欲しい」という意図から、映像中の曲に効果音やセリフが被せられたり、わざと楽曲を中断する形で間にインタビューや舞台裏映像が差し込まれるといった構成が多く見られますが、そんな風潮もまだ無かったであろう当時に、純粋な演出としてこうした効果音を乗せたMVを作っている辺りに「いかにもハロプロだな」という印象を受けて個人的に大好きです。

 

(キャプテン・マーベルを観た時にこのMVを思い出して笑ったのは僕だけじゃないはず) 

 

 

【非ハロ④】『↓エイリアンガール・イン・ニューヨーク↑/虹のコンキスタドール

www.youtube.com

 

まず初めに断言しておきますが、僕は「虹のコンキスタドール」が歌うこの「↓エイリアンガール・イン・ニューヨーク↑」『21世紀のLOVEマシーンと言ってもいいぐらい稀代の大名曲だと思っています。 

 

そんなこの曲をオススメするにあたって事前にお話したいのは、ハロプロの持つ『カウンターカルチャー』としての性質です。

 

カウンターカルチャーとしてのハロプロ

 

そもそもハロプロの起こりは1997年、TV番組「ASAYAN」において開催された「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」の落選者のみでモーニング娘。が結成された所まで遡ります。

 

1987年のおニャン子クラブ解散以降、『歌って踊るグループアイドル』という存在が消失し「アイドル冬の時代」に入った当時の日本の音楽シーンは、安室奈美恵、globe、華原朋美といった、いわゆる「小室ファミリー」と呼ばれるアーティスト群や、SPEED、MAXなどのダンス&ボーカルグループが軒を連ねる、徹底して「質」を競う時代でした。

 

そんな煌びやかなシーンに突如現れ、「歌もダンスも下手な田舎臭い小娘たち」という全く真逆の個性を武器に殴り込みをかけた異分子中の異分子が、結成当初のモーニング娘。でした。

 

その後モーニング娘。が前述した「アイドル冬の時代」に溜まりに溜まった世間の需要とフラストレーションを大爆発させる形で躍進を見せ、後続のグループと共にハロプロ旋風を巻き起こしたことは語るまでもありません。

 

この通り、ハロプロの原点にしてその骨子を作り上げたモーニング娘。成功の一要因には「当時の時流の逆を行った」という点がありました。

 

こうしてブームとなったハロプロはJ-POPのメインストリームとしての地位を得てからも、その精神性はひたすら反逆者であり続けました。

 

これについては「常に注意深く時流を読んで挑戦的に逆張りを続けてきた」と言えば聞こえはいいですが、要するにいい意味で「天邪鬼」なんだと思います。

 

ただ、こうした「天邪鬼」な所に好感を持って応援しているハロヲタが多くいるのも事実ではないでしょうか。

 

そういった意味で、「カウンターカルチャー性」というのはハロプロを語る上で重要なキーワードになるかと思います。

 

・↓エイリアンガール・イン・ニューヨーク↑について

 

本作については、まず先述したダンス☆マンが編曲を担当しているという点で、ハロヲタにとっても一見して馴染みやすい空気を纏っているかと思います。

 

しかし特筆すべきはその歌詞で、あえてキャッチコピーを付けるなら「超攻撃的自虐」とでもいいましょうか。

 

そもそも本作は『60分越えの完全版ミュージックビデオ兼主演映画(※)』として制作された、『コンキスタドール・フロム・アウタースペース』のストーリーに沿う形で作詞されたものですが、その内容は実に鋭敏に現代の時流を捉えているように感じました。

 

ネットの拡大にともない若者が世の中を冷静かつ広く見るようになった結果、誰もが周囲の視線を気にして、「イタい」という評価を下されないよう注意深く振る舞うようになった現代。

 

「〇〇してみた」などの語尾や言葉遣いにも「あくまで趣味で本気じゃないです」といった暗な謙遜や「他人にからかわれたり、揚げ足を取られないための予防線」といった守りのニュアンスを感じます。

 

そんな良くも悪くも冷めた『現代的な若者』の感性を溢れんばかりに詰め込んで、ひたすらにネガティブの底の底を掘り続けた末にたどり着く『自信の無さについての自信なら誰にも負けない』とでもいうような、一周まわった超強気のハイパーポジティブが描かれているのが本作です。

 

これは虹コンの姉妹グループ的立ち位置の「でんぱ組.inc」が「W.W.D」で確立した、「非リア=マイノリティー層の逆襲」という構図をただ流用するのではなく、更にそこへコミカルさやクリエイティブな要素を盛り込んで、(単純なリア充VS非リアの対立構図にするのではなく、もっと皆で色んなことを工夫して楽しもう!)といった第三の選択肢を提示しているようにすら感じます。

 

同曲がリリースされた2016年のアイドル楽曲大賞を見ても、「サイレントマジョリティー/欅坂46」「オーケストラ/BiSH」といったシリアス志向の本格派な楽曲が多く並ぶ中、不景気下には決してそぐわない浮かれたディスコミュージックをあえて叩きつけ、その実歌っている内容は冷静に時流を読んだ上での見事な逆張り、という点に、先述したカウンターカルチャーとしてのハロプロの静かな凄味に通ずるものを感じたため、この『↓エイリアンガール・イン・ニューヨーク↑』を選びました。

 

ちなみに僕は陶山恵実理さんが大好きです(※現メンでは隈本さん推しです)

 

 

 

 

【ハロ④】『LOVEマシーン/モーニング娘。

www.youtube.com

 

さて、今回のブログの中でもとりわけ高い熱量で書いた『↓エイリアンガール・イン・ニューヨーク↑』に対応する形で紹介したいのは、先述した通り、もはや皆さんご存知であろう大名曲、モーニング娘。LOVEマシーンです。

 

曲自体はおそらく誰もが聞いたことがあると思いますので、この「LOVEマシーン」については、曲が生まれた経緯や当時の時代背景について触れることで紹介に代えさせていただきます。

 

・初期モーニング娘。の苦悩と逆襲

上記の通りバラエティ番組のオーディションにおける「落選組」として結成されたモーニング娘。は、『限定シングル「愛の種」を5日で5万枚売り切る』という一見無謀とも思える挑戦を見事クリアして正式にデビューが決定しました。

 

次いで、メジャーデビューシングルとなる1st「モーニングコーヒー」がいきなりのオリコン6位に食い込むと、続く2nd「サマーナイトタウン」では4位、そして3rd「抱いてHOLD ON ME」ではついに念願の1位を獲得。

 

この勢いで「次世代の主役の座を掴むか」と期待されたその時、当時グループの歌姫であった福田明日香が突然の脱退を発表。

 

それでも「下を向いている時間はない」とばかりに、安倍なつみをソロセンターに据えた新体制で、同じくASAYANから先にデビューした鈴木亜美との「同日発売シングルの売上直接対決」という対戦企画に挑むも、結果は惨敗。

 

こうして度重なる悲報を受け、現状のスタイルに頭打ちな空気が漂い始めた当時のモー娘。は、重苦しい閉塞感を打ち破るべく一世一代の賭けに出ました。

 

第3期新メンバー、すなわち後藤真希の加入です。

 

f:id:ChelGebara:20190630221415j:plain

 

オーディション当時からあのつんく♂をして「レベルが違い過ぎた」と言わしめた当時若干13歳の”異材”後藤真希

 

しかし当時の彼女には、これまでモーニング娘。ひいては日本のアイドル界がひたすら忌避し続けてきた「金髪」や「ピアス」といった『ギャル』の要素が多分にありました。

 

そしてこれまでの常識から考えれば、「いわゆる保守傾向の強いアイドルファンが、当時のアイドルイメージの真逆に位置していた”ギャル”を受け入れるか否か」という問いの答えは考えれば考えるほどに明白でした。

 

しかし、「既存のアイドルファン向けビジネスの常識を超えてこそ、その先にある”一般層への訴求”という扉が開く」という強い志のもと、ハロプロはこの劇薬・後藤真希モーニング娘。に飲み込ませました。

 

しかもそれだけではなく「デビューシングルからいきなりのセンター抜擢」という破格の待遇をもって迎え入れ、一世一代の大勝負に臨むグループに、過去類を見ない大きな変革をもたらしました。

 

そうした流れの中で生み出された起死回生の一手がこの「LOVEマシーン」です。

 

これはバブル崩壊による混乱の世紀末にあった当時、時代に選ばれた異材を加えたモーニング娘。が、逆境を超えて打ち出したたった1曲の異色作により、長く止まっていたアイドル界の時計の針を力強く動かした瞬間でした。

 

・革新としての「ラブマ」

こうして当時のグループの閉塞感を打ち破るべく「メンバー・ビジュアル・楽曲」と様々な側面から大胆な刷新を打ち出したモー娘。の「ラブマ」は、奇しくもアイドル楽曲、ひいてはJ-POPの新時代の扉をも劇的に開くこととなりました。

 

そんな背景を知った上で改めて聞くと、終始浮かれ調子のこの曲の本当の凄味が見えてくるのではないかと思います。

 

【非ハロ⑤】『ウダガワ・ヨッキュー/クマリデパート』 

 

www.youtube.com

 

最後に紹介する非ハロ曲はクマリデパートの「ウダガワ・ヨッキュー」です。

 

ここまでの紹介において、ハロプロ歌詞は”衣食住”をフックにして”人間”を歌う」という話をしてきましたが、このウダガワ・ヨッキューにもそんなハロイズムが見て取れます。

 

そんな同曲の作詞は、1曲目に紹介したFES☆TIVEの「ディスコ列島浮世の夢」同様、児玉雨子さんです。

 

若くしてハロプロ楽曲の作詞に多く携わっているため、時にハロヲタから絶大なる信頼を込めて「つんく二世」などと評されることもある児玉さんですが、インタビュー等を読むと、あくまで「ハロプロ的な歌詞」を意識することはあっても「つんく♂詞そのものをなぞる意図はない」という考え方が見て取れます。

 

www.e-aidem.com

 

 

そんな児玉さんによる作詞と、アップアップガールズ(仮)をはじめとする多くのアイドルへの楽曲提供で知られるmichitomoさんの作曲により生み出された『ウダガワ・ヨッキュー』ですが、同曲のハロプロ要素を紐解くカギは「土地性」という要素にあります。

 

 

「土地性」というフック

 

上記「Lily of the valley」の「幸福ご飯」の紹介において「衣食住の中でも、とりわけ”食”は頻繁にハロプロ歌詞に用いられる要素」と書きましたが、それに対して”住”の要素を担っている「土地(街)」を用いた歌詞フレーズは、「不変の価値観」であるところの「食べ物歌詞」に対して、「変容する価値観」という属性を持っていると思います。

 

というのも「子供の頃に好きだったカレーが大人になって嫌いになる」といったことはあまり一般的にはないと思いますが、「子供の頃によく行っていた街に、大人になってからあまり行かなくなる」という経験は、おそらく多くの方がしているのではないでしょうか。

 

それは単に自身の成長に伴って興味の対象が移り変わり、物欲の方向や遊びの内容が変化していくにつれ、各土地(街)への需要度が変わるからだと思います。

 

更に逆説的に言えばそれは「各土地(街)に対する感情をどう描くか」によって、歌詞内における「世界を見る目線」の角度を自在に操作できるということになります。

 

特にモーニング娘。の「Do it! Now」における歌詞「宇宙のどこにも見当たらないような約束の口づけを原宿でしよう」などは顕著な例で、ここには「都会」と「恋愛」という未知への憧れを人生の最上位に据える思春期女子から見た、「原宿>宇宙」という若い感性の構図が強く見て取れます。

 

このように「人が特定の場所に抱くイメージ」というのは、各世代における個人の価値観を含むと同時に、時代のニーズにより開発が進むなどして、常にその姿形や機能・ニーズを変えていく土地(街)の”今の形”が反映されたトータルとして成り立っているように感じます。

 

『ウダガワ・ヨッキュー』について

 

そんな「土地性」についての僕の解釈を書いたところで、改めて「ウダガワ・ヨッキュー」の話に戻ります。

 

タイトルの通り渋谷区の宇田川を歌詞のフックに据える同曲は、本来「渋谷」だけでも「都会への憧れ」要素としては充分強いようなところを、あえて更に細かく「宇田川」を指定している辺りに、見知らぬ街で初めて見つけた路地裏を気まぐれに進んでいくような冒険心を感じます。

 

ちなみにクマリデパートにはデビュー曲の『愛Phone渋谷』という「まさに渋谷!」という楽曲があるので、(もしや児玉さんは、そこと被らないようにしつつ「渋谷⇒宇田川」と、更に深く歩を進めた印象を抱かせたかったのでは?)と推測するのは少し考え過ぎかもしれませんが、ハロプロに限らずアイドル全般への想いの強い児玉さんなら、クマリの既存楽曲群を聞いた上でそこまで考えていても何ら不思議はないなと思います。

 

(更にいうと、「愛Phone渋谷(48)」と「ウダガワ・ヨッキュー(49)」で、デビュー曲と最新曲との対比の中にグループの成長を表す「+1」の隠喩を込めたのではないかとも邪推しています)

 

 

 

歌詞に負けない振付と歌唱 

 

更に注目すべきは歌詞だけでなく、サビの振付での足パカ(※リンク参照)や、冒頭の小田アヤネちゃんやサビ前の優雨ナコちゃんのセリフ部分、楓フウカちゃんのガナリ歌唱、2:51での早桜ニコちゃんパート「デートもいいね」の発音が「デートもウィいね」になっているなど、探せば探すほどニヤリとできるポイントの詰まっている歌唱と振付も、ぜひ意識して聞いてみて欲しいと思います。

 

xn--mdkq9db.com

 

 

正規ハロプロへのリスペクトを強く感じさせながら、単なるカーボンコピーに終始することなくしっかり自分達の色を打ち出している点に、他にはない面白味を感じた一曲でした。

 

 

 

【ハロ⑤】『夢みる15歳/スマイレージ

www.youtube.com

 

最後に「ウダガワ・ヨッキュー」に対応させて紹介するのはスマイレージの「夢みる15歳」です。

 

この「夢みる15歳」は、スマイレージハロプロの新グループとしてメジャーデビューした2010年に発表された楽曲です。

 

時代背景について軽く触れると、ブレイクから息つく間もなく飛ぶ鳥を落とす勢いでアイドルシーンの首位を独走し始めたAKBに対し、当時のハロプロは追い抜かれる形でその後塵を拝することとなりました。

 

次第にSKE48NMB48といったいわゆる支店グループも登場し、本格的に「アイドル戦国時代」に突入した当時では、いわゆる「フェス」や「対バン」といった合同形式のライブが増えていきました。

 

この合同イベントについて、表面上は「それぞれのファンが一度に複数グループを見ることができるお得なライブ」という見方が主でしたが、その実「全く同じ環境・会場・客という条件でライブの盛り上がりを比べられる」という、「生々しいまでの対決の場」という側面も強く認識されていました。

 

そして当時、長期に渡り新メンバーの加入がなく平均年齢が高くなっていた、通称「プラチナ期」に当たるモーニング娘。は、どちらかというと「アイドルとしての可愛さ」よりも「大人の女性としてのカッコよさ」を打ち出した、ダンス&パフォーマンスグループ色が強くなっていました。

 

おそらく事務所もそんな現状の娘。が、AKBが席巻していた当時のアイドルシーンの対決の場に殴り込むのは場違いであり不利なことは重々承知していただろうし、何より旗艦であるモーニング娘。の敗北はすなわち「ハロプロの敗北」と同義であるため、そういった場に娘。を送り出すことはしませんでした。

 

そのため当時のハロプロには、これまでアイドル市場を独占してきたことにより染みついていた鎖国体制を解き、AKBを始めとする強敵たちを迎え撃つ新兵の登場が待ち望まれました。

 

そんな流れの中で結成されたのがスマイレージであり、その初期スマイレージに与えられたライブ用の必殺の武器がこの「夢みる15歳」でした。

 

「4人組」という”邪道”

 

次に、初期スマイレージの人数編成について書かせてください。

 

人数というと、元来アイドルグループの編成といえば「3人や5人がベスト」といった論調がありました。

 

おそらくそれは、メンバーの個性の化学反応を引き出しやすい人数であると同時に、ライブにおけるフォーメーションでの魅せやすさといった側面があるのかと思います。

 

しかしそんな「フォーメーションでの魅せやすさ」という要素は裏を返せば、「個人技レベルの隠しやすさ」とも言い換えられます。

 

そしてそんな3人組や5人組と対照的に、あまり見ることがなく、かつては「邪道」的なニュアンスすら感じた「4人組」について。

 

4人組はどうやっても自然な三角形を作れず「3人+1人」になってしまったり、V字やひし形に陣形を組んでも全体が見づらかったりと、先述した「フォーメーションでの魅せやすさ」という基準では、おそらく最低といってもいいぐらいの人数編成かと思います。

 

そしてその「フォーメーションが魅せにくい」という弱みは、裏を返せば「個人単位のスキルやビジュアルを最も強く打ち出せる」という強みになります。

 

そのため「3人組・5人組最強説」は「アイドル=歌もダンスも下手だけどカワイイ」がスタンダードであった前時代における定説であり、スキルの高さをウリにするグループが続出した戦国時代以降のアイドルシーンではその限りではないのではないでしょうか。

 

そして僕の中で「4人組=個人レベルの訴求に特化した形」のイメージを最も印象付けたグループが初期スマイレージでした。

 

ただ対するクマリデパートの場合は、厳密にいえば5人での新体制が不測の脱退により4人組となった経緯があったため、100%意図した上での4人編成ではありませんが、その後発表された楽曲群を見ても、陣形の組み方などに4人組ならでは強みを生かす工夫が多く見られます。

 

そしてその最たる例として、これまで何度も強調してきたハロプロ特有のキテレツダンス「足パカ」を例に挙げてこの紹介文を締めたいと思います。

 

「4人組の横一列」という神の陣形

 

僕が思う「ウダガワ・ヨッキュー」との最大の共通点にして、対比での紹介に「夢みる15歳」を選んだ最たる理由が「4人組の横一列」という神の陣形があることと、さらにその陣形で踊るのが「足パカ」だという点でした。

 

というのも「4人組の横一列」を僕が”神の陣形”と称したい最大の理由は、AKBや坂道等の大所帯グループを除き、ライブ中の陣形として「横一列」が最も美しく成立するのは4人組だけだと思うからです。

 

これは僕の肌感覚でしかありませんが、こと横一列という並びにおいて、3人以下では少なく、逆に5人以上では多いと感じます。

 

つまり横一列は、本来フォーメーション組みに難のある4人編成だからこそ逆にできる唯一の陣形なのです。

 

そしてそれが最も顕著に表れていると感じたのが、先ほど貼った「夢みる15歳」MVにおける(1:09~)の「4人組・横一列」での足パカダンスです。

 

この「単体で見るとマヌケなはずの動きが、複数人が高レベルでピタリとシンクロさせると何よりもカッコよく見える」というギャップの妙こそ、ハロプロ美学の粋の一つであり、「ダサさに生じたカッコよさ」という真髄に連なる部分だと思います。

 

残念ながらMVでははっきり映っている部分はないものの、「ウダガワヨッキュー」のサビにも、この「4人組・横一列」での足パカダンスがあるので、下記ライブ動画などからぜひ見てみてください(※時間調整済)

 

 

※ちなみに「夢みる15歳」には 「イヤフォン事件」という、ハロヲタの面倒臭さが炸裂している僕の大好きなエピソードがあるので、そこももしご興味あればどうぞ⇒http://colorhello.blog.jp/archives/1072261251.html 

 

最後に

 

まーた例によって例の如くまとまらないクソ長文となりましたがいかがでしたでしょうか。

 

ハロプロはつい最近「20周年」という大きな節目を迎えるなど、名実共に揺るがないアイドル業界の老舗となりましたが、その分悪い意味で「ハロプロ最強」を唱え、ろくに見もしないでハロー外のアイドルを見下す一部の心無いファンがいるのも事実です。

 

僕自身も初めてちゃんと見たアイドルがハロプロであり、そのライブや楽曲クオリティの高さには身内贔屓抜きで絶対の信頼を寄せてはいますが、だからといってハロ以外のアイドルをハロプロと比べて否定したり悪く言うつもりはないし、むしろそうして様々なアプローチがあるからこそ、アイドル楽曲全体の深みが増すと思っています。

 

そして同時に、ハロ以外のグループからアイドルに興味を持った人にも、これからハロプロを知ってもらい、好きになってもらえたら嬉しいなと思います。

 

「20年」という歴史に尻込みすることがあるかもしれませんが、全くそんな必要はなく、例えばガンダム等と同じように、自分が興味を持った作品(orグループ)・年代・箇所から自由につまみ食いできるのがハロプロの良いところなので、決して「見るからにはすべてを知らなきゃいけない」なんて鼻息を荒くすることなく、あくまで自分のペースで好きな年代、好きなグループから気軽にハロプロに触れてみて欲しいなと思います。

 

(ちなみに全くの初見からハロプロを見る方に僕がオススメするなら「2014年のモーニング娘。」を推します)

 

というわけで、長くなりましたが今回はこの辺で失礼します。

 

お付き合いありがとうございました!

 

おやさゆみん

 

f:id:ChelGebara:20190701015719j:plain