シングルボーイ下位時代

しょっぱいドルヲタが細々と喋ります

2017年グラドル横丁の思い出

男と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る「史上最高の夏」―。

グラビアヲタクとは、「史上最高の夏」を目指す夢想家(ドリーマー)のことである!

 

…はい。

超絶カッコいいイントロが頭をよぎった皆さんルックルックこんにちはゲバラです。

 

悠長にまえがき書いてると夏が終わるので急いで本題いきます。

 

 

①事の経緯

2017年5月下旬、解散ライブを目前に控えた某推し箱のラストランやら別の推し箱の周年記念公演やらが一挙に重なりゲバラの情緒がお江戸はカーニバルだったこの時期。

 

日に日に感情の整理がつかなくなっていく限界状態の中、その報は突如ゲバラのTLに舞い込んだ。

 

そう、今年のグラドル横丁の情報が解禁されたのである。

 

 

 

②グラドル横丁とは

「そもそもそのグラドル横丁とは何だ?」という方は過去動画だがとりあえずこれを見て欲しい。

www.youtube.com

 

さて、上の動画の肌色面積を見てもらえれば、僕がなぜ今これだけ必死に鼻息荒くキーボードを叩いているかだいたいお察しいただけたかと思う。

 

簡単に言うと「グラドル横丁」とは、「アイドル横丁」という大型アイドルフェスにおける企画の一つで、夏らしく水着を着たグラドルやアイドルとチェキ撮影やゲームが楽しめるというだっちゅ~のいや~んパフパフまいっち~んぐダッダ~ンボヨヨンボヨヨンな男の夢である。

 

しかし2017年上半期当時のゲバラはまだグラドル横丁を体験したことがなく、実際のスペース内などその全貌については先の動画と偉大なる先人の残したありがたいお言葉の伝え聞きでしか情報が無かった。

 

まぁ、とはいっても当時の僕はヲタクになって初めての推し箱解散を目前に控えたガラスの(ピー)十代だったのでこの時点で「わ~いおっぱいだ~♡」などとテンションを上げることは流石にできなかった。

 

そうしている間に月日は過ぎ、先述した推し箱の解散や別の推しメンの初めての生誕イベントなど悲喜こもごもなイベントラッシュが一通り終わり、嵐の連続のようだった精神がやっと少し落ち着いてきたかというところで、解禁から少し遅れて誰かしらのリツイートをキッカケにこの情報を目にした。

 

 

「なんだこの最高のナオンは…」

率直な第一声がそれだった。

 

③『隈本さん』というナオン

 

調べてみるとその方は虹のコンキスタドール予科生(当時)の「隈本茉莉奈」さんという方だった。

 

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※盛れてる画像選んだぞ隈本さん…!

 

 

やっと精神的に喪が明けつつあった当時のゲバラは、このタイミングでの隈本さんとの出会いに運命的な何かを(勝手に)感じとった。

 

正直、虹コンのグラドル戦闘力(※そんな日本語はない)の大半はかの有名な根本凪©(※)が占めているという認識だったので、まさかこのタイミングでこんな思わぬ伏兵に出くわすとは思っておらず、僕のテンションは仮装大賞ばりの見事なジワジワ伸びを見せた。

 

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虹のコンキスタドール根本凪さん 

 

こうして散々「推し箱解散ヤダヤダ」と毎晩枕に顔をうずめて泣いていた(※実話)キショイヲタクは、いざ推し箱が解散するとほどなくしてスパッと気持ちを切り替え、毎晩隈本さんの水着画像ツイートを全裸待機し、投下直後に引リツで求愛しながらバキバキにキマるという、<①ヲタクとして/②男として/③人として>の三面から立体殺法的に酷い醜態を晒していくのであった。

 

 

④募る思い

こうして「隈本さんに会ってみたい!」という思いは日ごとに大きくなっていった。

 

しかしただ普通にライブ行って特典会に会いに行くのではつまらないので、「せっかくだからグラドル横丁で初対面を果たそう!」と謎の思い付きがティン♪ときたゲバラ

 

ここでは詳しく書かないが、実はそれ以前も何度か虹コンの現場に行ったことはあったので、水着ツイートをキッカケに人知れず始まる前に何気に生で隈本さんを見た事はあった。

 

ただ、何度も言うがひたすら険しくなるのであまり多くは語らないが、以前現場に行った際は別の子メインで見てたのであまり隈本さんを注目して見てはいなかったというか、当時の隈本さんが「予科生」という研修生的な立ち位置であり、あまりライブでの出番も多くなかったこともあって申し訳ない話あの頃はそこまで注目しては見てはいなかったのである。

 

それがちょっと水着画像上がっただけでこれなので、推しロス直後の傷心メンタルだったことを差し引いてももうホントに人権を取り上げられても何も文句の言えないカスヲタクぶりである。

 

しかし本能と剥がしには逆らえないのがヲタクの常。

僕は6月を丸々使って完璧な初対面に向けての計画を練り、来るべき運命の時に備えた。

 

⑤アイドル横丁初日

 

「時は来た!それだけだ」

かつて橋本信也はそう言った。

 

2017年7月8日。 

ついに訪れたアイドル横丁初日の朝。

僕のメンタルは完全に在りし日の橋本にシンクロしていたことであろう。

 

いい大人が金を払って水着のアイドルとチェキを撮ろうと休日の朝から引くほど早起きして電車移動しながら息巻いている。

 

そりゃあ蝶野も笑うわけである。

 

⑥悪夢の幕開け

改めて今振り返ると、この日ほど自身の計画性の無さと見通しの甘さを悔やんだ日はない。

 

なぜならその朝、横丁の動員規模を舐めていたゲバラは自分の中での『そこそこの早起き』でチンタラ会場に向かった結果、現地に着いた瞬間に絶望を味わうことになるのである。

 

⑦進まない列

 

会場の赤レンガ倉庫に着くと、なにやらライブスペースに入る為には事前に購入していたチケットをリストバンドに交換する必要があるようだった。

 

そして僕は去年も来てるくせにこのリスバン交換にかかる所要時間の長さを完全に失念していた。

 

見るとリスバン交換エリアから伸びる長蛇の列&豪。

 

しかし愚痴を言っていても始まらない。

マグナムトルネードばりに滾る思いを抑えながら、大人しく最後尾に付く。

 

そうしてる間にしばらくすると、真夏の早朝から列に並んでやや憔悴していたゲバラに、更に追い打ちをかけるような音声が響いた。

 

⑧生き地獄

 

「それではこれから、爆乳コラボステージのスタートで~す!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!???????」 

 

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それは僕にとってこの日1回目の死刑通告だった。

 

本来自分の推しグループのステージに合わせて無理のないようノロノロ会場入りするはずヲタク達が、なぜか界隈を超えて一斉に集結する朝一番のステージ、それが『爆乳コラボ』。

 

すなわち、その日グラドル横丁に参加するグラドルとアイドルが全員一つのステージに”水着で”集まって、一曲披露するという神のようなステージなのである。

 

何を隠そう、僕もこの爆乳コラボを見るためだけに苦手な早起きを(そこそこ)頑張って遠路はるばる電車に揺られ、慣れない横浜の地へたどり着いた勇者の一人。

 

そんな男にとってのガンダーラと言っても過言ではないステージが、こともあろうにまだ僕が入場用のリストバンドを手に入れていないタイミングで始まったのである。

 

既に心は阿鼻叫喚。

『もうちょっと待って!!!もうすぐ!!!もうすぐリスバン貰ってそっち行くから!!!ねぇ!!!お願い!!!待ッッッッて!!!!!』と秒で幼児退行したメンタルが悲痛な叫びを上げていた。

 

それもそのはず。

アイドル横丁のライブスペースは、タダで入れるエリアから会場内を覗き見ることができないようしっかり設営が工夫されていた。

 

爆乳コラボの開始アナウンスを聞き反射的に列を飛び出してライブスペースへ駆け寄ったゲバラが幕の張られた高い柵の前でどれだけチンパンジャンプしても、そのエリア内は全く見えなかった。

 

その癖やけに音だけは無銭エリアまで届くので、おそらく自己紹介MCと思しき、

 

「Gカップで~す♪」

 

みたいなマイク音声はしっかり無銭エリアにも響き渡っていたので、中の様子が何も見えない外からそれを聞いていた僕はあまりの生殺しっぷりに、

 

「あぁああああああああいっそ殺せぇええええええええ」

 

と叫びながらギリギリ正気を保つのが精一杯であった。

 

こうしてそれまで幾度なく想像してきたこの世の楽園は、いざ現地に着くと一転、生き地獄の様相を呈した。

 

⑨試される理性

 

こうして結局、あれだけ夢に見た爆乳コラボを肉眼で拝むことの叶わなかったゲバラ

更に先述のとおり一度列を外れてしまったので再度最後尾から並び直すこととなった。

泣きっ面に怒首領蜂である。

 

その後ショボくれながらようやくリスバン交換を終えて会場内に入ると、さっきまでありえん盛り上がりを見せていた爆乳コラボの熱が嘘のように消えていて、割とマジで少し泣きそうだった。

 

しかし悩んでいても仕方ない。

目には目を。グラビアにはグラビアを。

グラビアで負った傷はグラビアで癒すしかない。

 

そうして『グラドル横丁に行って水着の隈本さんと初対面チェキを撮る』という本来の目的()を思い出したゲバラは、再度ライブスペースの外へ出てグラドル横丁の整理券売り場へと急いだ。

 

そこから先はお察しの通り。

またも見渡す限りの列、列、列。

時代を超えた大名行列かと思うくらいに、夏と無関係な謎の熱気を発する紳士()なヲタク達が大行列を成していた。

 

早くも先ほどの悪夢が蘇り、この時点で若干心の折れかけているゲバラであったが、しかしさっきはさっき、今は今。

 

『次こそこの行列の先に輝かしい未来が待っているはず』と信じて疑わず、キラキラした目で再度最後尾に着いた。

 

こうしてまたも炎天下の中、大行列を並び抜く純日本的なミッションが始まった。

 

『次こそテコでも動かないぞ』

 

そう固く決意した直後、スマホで時間を確認してみるとあることに気付く。

 

「もうすぐAISのライブ始まるやん」

 

テコよりやべぇヤツがきた。

 

現在目下最高レベルのちゅきちゅき度を誇る僕の推し箱「AIS(アイス)」のライブがほどなくして始まるというのである。

 

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AIS-All Idol Songs (アイス)

 

見ると、公式Tを着た知り合いのAISヲタさん方が次々と楽しそうにライブスペースへ向かっていた。

 

対して僕はなぜかこんな所(※グラドル横丁整理券販売待機列)にいる。

 

「さすがにグラビアと推しメンを天秤にかける事はできないだろw」

 

我ながらそう思い、すぐさま列を外れてAISのライブに向かおうとしたその時、不思議な事に意思に反して僕の足は動かなかった。

 

時に皆さん、『コンコルドの誤り』という言葉を知っているだろうか?

 

かつて開発されていた超音速旅客機コンコルドについて、理論上『このまま開発を続けても採算が取れず、実用化にたどり着けない』と分かっていながら、これまでに投じた費用が無駄になることを恐れて撤退のタイミングを見失い、結果更に大きな損失を出した、という実話に基づいた行動経済学の用語である。

 

 

 

すなわち僕は、この時自分がこの待機列で費やした時間、最後尾から進んだ距離、飲んだ飲料、垂らした汗、塗った日焼け止め、失った塩分等々に無意識に想いを馳せ、結果『大好きな推し箱のライブを干してでもこの列に並び続けた方がいいんじゃ…?』などという大それた思考がちらついた。

 

もしそんなことをして知り合いのヲタクにバレたら即座に横腹を竹槍で突かれて盲腸をウォレットチェーンのようにぶら下げながら丸一日歩くことになるのは必至だし、そうでなくてももしそんなことをしたら今後一生推しメンの目を見て話せなくなるな、とかろうじて繋ぎとめた正常な思考で薄っすらそう思っていた。

 

しかしそれと同時に、まだ見ぬ僕の中の悪魔が『全てを投げ捨ててグラビアに跪け』と耳元でささやく声も確かにはっきり聞こえていた。

 

こうして僕は人知れず理性と衝動の合間で揺れる暗黒の数分間を過ごしたのち、ついにその重大な決断を下したのであった。

 

⑩AISブレーク

 

「いやー、いいライブだったねー!」

袖に捌けていくAISの面々を見送りながら、ヲタ友さんたちと一緒にそう言える瞬間にこれ以上ない安堵感があった。

 

思えば、先ほどまでグラビア熱に当てられてすっかり頭がどうかしていたゲバラにとって、結局列を抜けてまで見にきた推し箱のAISのライブは最高の熱冷ましになった。

さしづめAISだけに「AISブレーク」といったところだろうか(平日定期なんてなかったんや)

 

それに考えてみれば、そもそもこのイベントの名前は『アイドル横丁』。

僕はアイドルを見に来たのであり、グラビアを見に来たわけではない。

ついでに言えば、そんなにグラビアが見たいのなら後日ソ〇マップとかに行けばいい話である。

 

そう、あくまでグラビアはアイドルの魅力の一側面に触れるためのオマケ的要素。

仮にニアミスでそれを見る機会に恵まれなかった不運が少しあったとしても、僕には大好きな推しメン(※清楚系グループ所属JK)がいる。

 

グラビアはあくまでオマケとして楽しみつつ、本筋はどこまでも一途にこの子を推すことに定めればいい。

 

そうしてやっと冷静な思考を取り戻したゲバラ

「それじゃ、またあとで~」とAISのヲタ友と一度別れてから再度グラドル横丁の整理券売り場に戻ると、そこにはこの日2回目の死刑通告が待っていた。

 

隈本さんの整理券が売り切れていたのである。

 

⑪メンタルブレイク

 

正直これ以降の記憶は定かではない。

AISを含めたくさんのグループのライブを見たものの、開始数時間で立て続けに喰らった2発のパンチがあまりに重すぎたため、丸一日TKO状態で力ないゾンビウォークを続けたゲバラ

 

この日は既に心が死んでいた。

僕の2017年アイドル横丁初日は、こうして苦々しい思いと共に幕を閉じた。

 

⑫月光

僕には本当に心が折れた時によく聞いている曲がある。

 

鬼束ちひろの「月光」である。

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帰りの電車ではこの月光だけをエンリピで聞いていた。

グラビアの神様(※そんなものはいない)に完全に嫌われたこの日の僕は、きっと人生におけるすべての光を失ったような眼をしていたことであろう。

 

「自分は今なぜこんなに悲しいのだろうか?おっぱいを求めたからか?中途半端な気持ちでおっぱいを見ようとした報いか?おっぱいは人をここまで絶望させるものなのか?おっぱいはこんなに悲しいものなのか?おっぱいは喜びと幸せの象徴ではないのか?おっぱいって何だ?人生って何だ?」

 

ボロボロの心はそんな無為な思考を繰り返し、ぼーっとして何度も乗り換えをミスりながらも、何とか無事帰路についた。

 

今でもこのツイートを見るとあの日の自分の未熟さを思い出す。

それでも諦めきれなかったのは、きっと僕がヲタクである以前に、男であったからだろう。

 

 

⑬再起をかけて

 

『ヒーローだから立ち上がれるのではなく、立ち上がれた者だけがヒーローになれる』

 

そんなどこかで聞いたぼんやりした格言を胸に、僕は心を奮い立たせ、奇跡の再起をここに誓った。

 

もう二度と同じ轍は踏まない。

僕は帰宅直後すぐに翌日の準備に取り掛かった。

電車移動のスケジュールを綿密に調べ直し、徒歩移動の時間も本来より多めに見積もった。

そして再度持ち物を確認してから、静かに一言こう呟き、床に就いた。

 

「明日こそは会いに行くぞ…隈本さん。」

 

 

 

⑭出陣~華麗なるリベンジへ~

 

2017年7月9日、朝。

 

Twitterを見ると「グラドル横丁の為に5時起きで電車乗ってきましたw」などという昨日のレポツイが流れていた。

 

僕は偶然それを目にして『このオッサンどんだけ必死なんだよ…』と軽くため息をつきながら、5時起きで乗った電車に揺られていた。 

 

仮に世界の全オッサンが「必死なオッサン」と「必死じゃないオッサン」に分けられる時、僕は間違いなく「必死なオッサン」の側にいたい。

僕はそう思いを新たにしつつ、上がるテンションをニッチなネタツイに込めながら順調に会場へと向かった。

よい子のみんなは「飛龍革命」で検索だ!

 

⑮僥倖

そうして会場へ向かう電車移動中、ふとTwitter画面を見ると、友達の少ないゲバラにはめったに届くことのないはずのDMが届いていた。

 

「新種のレ〇バンか?」と思いそのDMを開いてみると、それは既にグラドル横丁整理券を買おうと現地で列に並んでいたヲタ友さんから送られたもので、なんと「よければゲバラさんの分の券も一緒に買っときましょうか?」というありがたすぎる提案だった。

 

内心僕は狂喜乱舞。

持つべきものは友とホモ本だと改めて噛み締めつつ、さっそく返信をしようとしたところで、またも僕の指はピタリと止まった。

 

「本当にこんなアッサリと券を手に入れていいのか?」

 

昨日の悪夢がよみがえる。

たしかにここで代購を頼めば簡単に券は手に入るかもしれない。

しかしそれでは、丸一日自分の至らなさを噛み締めた昨日の出来事はどうなる?

 

人生は全力の遊びの中でこそ輝く。

たかがグラビア、されどグラビア。

 

きっとただ券を出して水着の女の子とチェキを撮る事だけがグラドル横丁ではない。

きっとその前の前、券を手に入れるまでのプロセスや準備や計画や思い、その全てが『グラドル横丁』であるはずだ。

 

(本当に大事な券は、自分の力で手に入れる)

 

そんな端から見たらバカにされるような、ちっぽけな意地とプライドすら持ち合わせない奴を、どうして男と言えようか。

そんな事を思ってから、僕は迷わずこう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、じゃあすいませんが3部と4部を1枚ずつお願いしますw」

 

 

 

必死なオッサンの辞書にもはや「プライド」という文字はなかった。

 

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⑯黄金の券

 

現地に着き、代購をお願いしていたヲタ友さんと合流してグラドル横丁の整理券を受け取ると、感動のあまり僕は少し泣きそうになった。

 

しかも初めて生で見るグラドル横丁の整理券にテンションが上がり過ぎた僕は、ヲタ友さんにやんわり促されるまで代金の支払いを完全に忘れていた。我ながらシンプルに失礼な奴である。

 

⑰いざ再び、爆乳コラボ

 

こうして万全の準備を整えいざ会場へ。

昨日既に2日分の通しチケットをリスバンに交換していたゲバラは、昨日の悪夢がウソだったかのように涼しい顔で入場した。

 

まずは昨日の忘れ物を取りに向かうべく「爆乳コラボ」へ。

しかしもうここから先は言葉で表現しようとする方がむしろ野暮なので、とりあえずこれを見て欲しい。

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最高の夏が始まったのである。

 

⑱G☆の名の元に

そしてある程度予想はしていたが爆乳コラボからのG☆Girlsがあまりにも良すぎたため、ついついチェキを撮るなどしてしまったゲバラ

 

昨日の呪縛から解き放たれ無限に羽の伸びるような思いだった。

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⑲ピザいかがっすか?

 

こうしてG☆の導きのままにチェキを撮り、太陽よりホクホクしながら歩いていたゲバラ

 

すると何やら、前から歩いてくる小さな女の子たちが視界に入った。

 

「ん?なんだろあの子たち?衣装っぽいの着てるし、客…じゃないよな?」

 

そんなことを考えながら近づくと、僕は目を疑うような事実に気付いた。

その女の子たちは他でもないAISであり、その中には僕の推しメンの橋本麗愛ちゃんもいたのである。

 

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AIS・橋本麗愛(はしもとれな)ちゃん

 

これはヤバいことになった。

その時推しメンは会場フードのピザを売るべく、宣伝のためメンバー数名で声かけに回っていたようだった。

見ると推しメンの手にはメニュー確認用のボード。

対して僕の右手には撮りたてホカホカのR18チェキ。

既に鼻の下は利根川より伸びきっており、さすがにこんな姿を推しメンに見られるわけにはいかなかった。

 

「ッ…!?」

 

しかし見ると推しメンはどんどんこちらへ近づいてくる。

(いっそこのチェキをここで食っちまえば…)と斬新過ぎるアイデアがよぎるほどには切迫する思考。

だが止まらない時間。

近づく推しメン。

さすがにここで急にUターンして走り出すのは不自然過ぎる。

どうする…どうする…ッ!

 

こうして突如、極限状態まで追い詰められた僕はまさかの行動に出る。

 

 

 

 

 

気付くと僕は、

目の前にあった草むらの影に飛び込んでいた。

 

 

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どうやら人は本当に追い込まれると草むらに飛び込むらしい。

「こんなにリアルな土の臭いを嗅いだのは何年ぶりだろう」と、身を屈めながら他人事のように僕はそう思っていた。

 

 

思えばただ涼しい顔でチェキをポケットにしまえば良かっただけなのに、ヲタクにここまで謎の背徳感を抱かせたのもまた、グラビアの持つ魔性の魅力の成せる業か(なに言ってんだ)

 

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あとでちゃんとピザ屋にも行きました(修羅カワでした)

 

 

⑳夢に見た楽園へ

 

こうしてちょっとしたハプニングもありつつも、早くもとうとうこの夏最大の山場がやってきた。

念願のグラドル横丁初潜入の時が訪れたのである。

 

代購していただいた整理券を震える手で握りしめ、案内通りに道を進む。

途中に立っていたスタッフさんに券を見せ、自分がその「権利を有する者」であることを証明すると道は開き、ついにグラドル横丁専用の特設エリア内に入った。

 

そこはまさに「この世の楽園」という言葉がピッタリの空間だった。

幸せ溢れる夢空間

そよぐ風、上がる歓声、こぼれる笑顔、伸びる列。

そして見渡す限りの水着の海。

その涅槃とも思しき光景に感動したのち、本来の目的を思い出して歩を進めた。

夢にまで見た本物の隈本さんがそこにいた(水着で)。

 

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そのまま列に並んで自分の番がくると、思わず一人感極まってしまい、

 

「初めまして隈本さん!!ずっと会いたかったです!!!」

 

と、めちゃくちゃ高いテンションかつかなり下から丁寧な挨拶をキメてしまい、当然むこうは、

 

「え…あ、ありがとーw」

 

と軽く引き気味だった(それはそう)

 

この時自分でも(やべー入り方間違えた)と思ったものの、こののちひと夏を通してとても思い出深いヲタ活を一緒に過ごすことになる隈本さんとの初対面がこれだったと思うと今では少し感慨深い。

そしてのちに隈本さんと過ごした最高の夏に関してはまた別のお話。

 

とにかくこうして念願の隈本さんとの初対面を果たし、ようやく昨日の無念を晴らすことに成功したゲバラ

改めてグラビアの神様に謝礼金をお支払いしたい気分である。

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㉑最後に

 

今更ですが皆さんよくこんな中身のない記事をここまで読み切りましたね!(無邪気)

 

さて、ここまでおふざけゼロのドキュメンタリータッチでお送りしてきた今回のブログ、いかがだったでしょうか?

 

これを見た皆さんの今夏が、1人1人にとって1度きりの、世界で1番最高の夏になることを願っております!

 

それでは、今年もグラドル横丁で会いましょう!!!

合言葉は「勇気!元気!早起き!」です!!

 

 

それでは長々とお付き合いありがとうございました!!!

お粗末!!!

 

何しに横丁行ったんやコイツ、

 

 

雰囲気で喋るな

昔から「なんとなく面白い」が嫌いだった。

 

思えば僕は昔から部屋もカバンも財布も汚い癖に、なぜか自分の思う「笑い」にだけは、マメで真摯で実直でいようとする謎のこだわりを持っていた。

 

加えて変な所でシャイなため、勢いやテンションや大声や動きで取る笑いに苦手意識を持っており、その反動からか歪んだ『センス信仰』のような物に陥った。

 

冷静に考えれば、芸人を目指して養成所に通っているわけでもないのに、ここまでやたら変に笑いについてこだわるのもおかしいというか、客観的に見てサムかったりイタかったりするのもなんとなく分かるのだが、それでも僕は自分の好きな「笑い」の形を崩したくなかったし、たとえKYだの協調性がないだのと言われようとも、自分が「面白い」と思った場面以外では極力笑いたくないというのが偽りない本音だった。

 

そのため僕は昔から「雰囲気で起こる笑い」のような物を感じると、なぜだかそばで聞いてるだけで自分がスベっているように恥ずかしくなり、背筋がゾワゾワする特異な体質を持っていた。

 

「周りが笑ってるから合わせてとりあえず笑う」みたいな空気が苦手だったし、そんな場に居合わせる度に(お前らちゃんと自分の頭で面白いか面白くないか考えてから笑え!)と謎にイライラしてしまうのであった。

 

ゆえに集団で喋っている時の僕は気付くと軌道修正役になっていることが多かったが、傍目から見るとやや損な役回りにも思えるそのポジションも、僕にとっては本棚の漫画を巻数順に並べ替えるようなちょっとした達成感があり、気付くと僕は目の前の笑いをキッチリ整えることに人知れず快感を見出すようになっていた。

 

誰かのボケが上手く周囲に伝わらず浮遊している時などに、説明を兼ねた細かいツッコミをスッと入れることでそのボケの息を吹き返させ、改めて場を成立させた時に堪らない充足感を得るような、分かりづらい変態性を育んできた。

 

これはそんな僕が牛丼屋に出向いたある日のこと。

 

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お昼時のピークタイムで店内は満席。

今から他の店に行くのも面倒だと考えた僕が少し待っていると、やっとカウンター席が一つ空いた。

 

席に座り注文を終えると、先に隣に座っていた男子大学生2名の会話が耳に入ってきた。

 

「いやーでも、やっぱ去年のアニサマ最高だったわw後ろの方だったから超騒げたしさw」

 

『マジでかw』

 

そんないかにも大学生らしい会話が聞こえてきた。

昔の僕ならここでしれっと違う席に移動しようとしたところだが、さすがの僕も人並みには大人になっている。

多少賑やかな大学生が隣にいようと特に気にせず、ただ黙々と牛丼を食らう。

そのくらいの年相応の落ち着きは持ち合わせたつもりだ。

まぁ仮に移動しようにもそもそも他の席が一つも空いていないので無理だったわけだが。

ともかくそんなこんなで、僕はぼーっと一人でスマホを触りつつ自分の頼んだ牛丼の到着を待ちながら、隣にいたやや賑やかな大学生二人の会話になんとなく耳を傾けていた。

 

 「それでさぁ、隣にいた奴が超荒れ始めてさwプラチナのイントロが流れた瞬間に『catch you catch meやれー!!!』とか叫び初めてさwでも結局プラチナでも飛ぶみたいなw」

 

『マジかよw』

 

「んでその後さ、〇〇(アニソン歌手?)が歌い終わったら前にいた奴らが一斉に帰って超見やすくなってさ!もうそこから俺も超飛びまくりみたいなw」

 

『マジかよw』

 

そんなテンションに見合わない薄い話と薄い相槌という、精進料理に精進料理をかけて食うような虚無な会話が実に男子大学生という感じで良かった。

 

こうして物言わず内心上から目線でこきおろしている僕だったが、(きっと周囲から見た大学生当時の僕も今の彼らのような虚無トークを日々楽しそうに喋っていたのだろうな)と思うと、なんにも面白くない話を実に楽しそうに話す彼らにもどこか愛しさを感じた。

 

きっとこうして人は大人になっていくのであろう。

冒頭で散々「こんな笑いが許せねぇ」とトガった若手みたいなことを書いていたのが今更恥ずかしくなってきた。

 

ともかくそんな少し奇妙ながら暖かい時間が流れていると、ほどなくして僕の注文した牛丼が到着し、ようやくの昼飯と相成った。

 

「…うん、美味い」

 

庶民派のゲバラの舌は今日も謙虚だった。

間違っても変なブルジョワジーに染まることなく、目の前のちっぽけな幸せを噛み締める。

 

「美味いなぁ、」

 

無意識のうちにリアル孤独のグルメ状態突入。

そうして無言でひたすら食べ進む。

 

ちなみに僕は牛丼の肉とご飯をキレイに一緒に食べきりたいタイプで、どちらかが多く残ってしまい最終的に単体で食べて無理矢理帳尻を合わせるようなパターンが嫌いだった。

 

そしてこの概念を勝手に「牛丼の歩幅」と呼んでいた。

陸上競技の幅飛びよろしく、右足と左足の歩幅を合わせ、最終的に両足を合わせて大きく跳躍するまでの流れにどこか似通ったものを感じたからだ。

 

今日も肉とご飯の歩幅調整は順調だった。

そしてこのまま完璧に食べきるビジョンがどんどん鮮明になってきたその瞬間、しばらく静かだった隣の大学生たちが再び賑やかに喋りだした。

 

大学生A「ってかさー、こないだカラオケ行ってさー」

B『はいはい』

ゲ(…)

A「あのーあれ歌ったんだわ…あのーなんだっけ…」

B『え、なになに?w』

ゲ(…)

A「あ、あれ!あれのやつ!プロジェクトXのやつ!」

B『あーはいはい!あれね!』

ゲ(…)

A「そうそう!鳥居みゆき!」

ゲ(…ッ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あまりの衝撃に僕の箸は止まった。

 

(もしや高度なボケか?今の大学生の笑いってそこまで先鋭化してるのか?いや待てさすがにそんな訳ない。すぐもう一人がツッコんで訂正するだろ。)

 

 

B「あぁ、鳥居みゆきね!」

 

(お前もボケかーーーーーーーーーー!!!!!)

 

 

ここで僕の意識は完全にこの二人の会話に奪われてしまった。

残り少ない牛丼の味を堪能しようとすればするほど、ボサボサ頭にパジャマ姿の女が素っ頓狂な声を上げてバットを振るジェスチャーをする光景が脳裏に何度もフラッシュバックした。 

しかもこのバカ大学生2人の暴走はここで止まらない。

 

A「あれなんだっけあの曲名…あ、そうだ!『銀の龍の背に乗って』だ」

 

もはやこの会話には何一つ正しい情報がなかった。

そして半ば予想していたものの、一縷の望みをかけてBのリアクションを待っていると、

 

B「あ~はいはい。あの曲ねw」

 

やはり期待したこっちがバカだった。

 

(言いたい…早く1から全てを訂正したい…)

 

過去数々のクロストークを軌道修正してきた口が考えるより先に疼き始める。

 

(いっそもう食い終わって出て行ってくれ)という願いもむなしく、2人の会話は偽りの共通理解を得たことで更に加速し、

 

A「でさ~、もうなんかほぼネタなくなったから鳥居みゆき入れたら超ガイドボーカル強くてwもう歌わないで機械にコール入れちゃったからねw鳥居みゆきにw」

 

B「マジかw」

 

(マジかはこっちだわ…)と頭を抱えながら聞こえないように呟く。

気付くと牛丼は味が分からなくなり、肉とご飯の歩幅もめちゃくちゃだった。

 

(言いたい…「君らが言ってるのって中島みゆき地上の星だよね?」って爽やかに言いたい…)

 

僕はずっと悶々としながら一度トイレに立った。

そして用を足し終え、(このあと席に戻った時、もしまだ二人があの話をしていたら、勇気を出して訂正しよう)と決意を固めて扉を開けた。

そして改めて自席に戻る途中で、あることに気付いた。

 

二人はもう帰っていた。

 

きっとあの二人は今後一生プロジェクトXのテーマソングは「銀の龍の背に乗って」であり、それを歌っているのは鳥居みゆきだと勘違いしたままの人生を歩んでいくことだろう。

 

僕はといえば、ここまで散々「軌道修正が得意です」などと自慢した挙句、大きく軌道の逸れてしまったあの二人の人生を全く救うことができなかった。

 

力なく座り、再度箸と牛丼を手に取る。

残った数口分をかき込もうと椀の中を見ると、不思議と肉とご飯の歩幅がピッタリ合っていた。

そのまま静かに食べきって席を立つ。

会計を済ませ店の外に出ると、初夏の日差しが眩しかった。

 

ふと振り返ると、ガラスに映った自分の姿がいつにもなく情けなかった。

それを見て僕は、なんとなく笑った。

 

 

 

 

 

僕と親友の仲を引き裂いた”ある女”の話

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人生で一度だけ友人に掴みかかった事がある。 

 

あれは(ピー)年前、金も女も学もなく、時間とやり場のない情熱だけが無限にあった高校時代。

 

当時アニヲタと声優ヲタの香ばしさだけを抽出して掛け合わせたサラブレッド二元豚の名を欲しいままにしていたゲバラ少年。

 

レモンが弾ける気配が微塵もしなかった17歳の日々。

 

リア充達の好奇の目線を遮るように伸ばした前髪。

それはさながら鬼太郎であり、当然スクールカーストも下下下の下。

 

そんな教室の隅で三角コーナの生ゴミlikeな腐臭を漂わせていた当時の僕にも、かけがえのない友がいた。

 

仮に名前をAとしよう。

端的に言ってAはキモヲタだった。

 

世間的に見てキモヲタの部類に入る当時の僕が、奴を見て何の躊躇いもなく「キwモwヲwタw」と言うくらいにはAはキモヲタだった。

小太りで声が高く、ゾンビ映画に出てくる最初に死ぬクラスメイト役の才能にピンポイントで恵まれていた。

 

そんなAの二次元への愛は凄かった。

否、キモかった。

 

そして絶妙にヤバさのベクトルこそ違いながらも、世間の爪弾きもの同士、僕等は出会ってすぐに親しくなった。

 

ちなみにAの家は裕福だったので、毎週のようにレモンの弾けない友人たちと入り浸った。

 

集まっても何をするでもなく、アニメの話に花を咲かせ、時にネットに興じ、交代で東方プロジェクトをプレイしながらお互いをはやし立てる。

世間から見たら極めてキモい、そんな日々が幸せだった。

しかしそんな平穏も長くは続かなかった。

 

その後「ウホっ♂男だらけのお泊り大会」を通じてついに寝食すら共にし、いよいよ染色体が一個違っていたら色々危なかった次元にまで深まった僕等の仲は、ある女により突如引き裂かれた。

 

その女、名を「間桐桜(まとうさくら)」といった。

 

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桜は16歳で、当時の僕等より一つ年下だった。

桜は澄んだ綺麗な声をしていた。

桜のCVは下屋則子さんだった。

桜は大人しく清楚な性格ながら衣服の下のボディラインは全く大人しくないという、まるでキモヲタの欲望を絵に描いたような女だった。

というか絵に描いた女だった。

そしてCVは下屋則子さんだった。

 

当時の僕とAは桜の出演するアニメ・ゲーム作品「Fate/stay night(フェイトステイナイト)」シリーズにバキバキに夢中であり、一時期は暇さえあればFateの話をしていた。

 

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(※ちなみにこの「Fate/stay night」は、願いを叶える「聖杯」というアイテムを巡って7人の魔術師が歴史や神話の英雄たちをパートナーにサバイバルバトルを繰り広げる話です。気になった人向けに詳細は文末で紹介しますが、「アニメとかよくわかんねーわ」って人もとりあえず雰囲気でついてきてください)

 

しかしこのFateの話となると、僕とAはとにかくそりが合わなかった。

作中で引用されている歴史や神話の元ネタをかき集めて得意気に語り悦に浸る「ソース周回型ヲタク」のAと、目で見て耳で聞き心臓で感じた衝動から二次的な妄想を無限に膨らませる「イマジネーション型ヲタク」の僕の話は常に平行線だった。

もはや二人とも自分の話をしたいだけの状態。

配慮という概念の存在しない世界。

互いに相手のターンではマンガを読みながら片手間で話を聞いていた。

ただ、気の置けない関係だからこそ成り立つそんな無遠慮さが当時の僕等には心地よかった。

しかしある日、この2人の男が桜を巡って初めて正面からぶつかることになる。

きっかけはある日のAの発言。

彼はいつも通りFateの話をしながら、何の気なしにサラっとこう言った。

 

「でもな~、桜はビッ〇だからなぁ、」

 

ーブチッー

 

こめかみから聞き慣れない音がした。

「おい待てA、今なんて言った?」

 

(※言い忘れていたが桜の家系はやや複雑で、彼女にはここでは若干書きづらいハードな幼少期を過ごした過去があった。詳しく言うとネタバレになるので雑に濁すが家の事情で仕方なく幼いころからそれはまぁ過酷な生活を強いられていた訳で、それを細かく描写し始めるとネタブログとしての陽気さを保てないのでザックリ察して欲しい。かしこ。)

 

話を戻します。

 

つまり、ちょっと怪しい方法で魔術の実験を繰り返していた家系に生まれた桜は、本意でないながらも仕方なくその暗い日々に耐えていた時期があった。

 

そこに先のAの発言である。

 

僕の体は考えるより先に動き、気付くとAの胸倉を掴みながらこう叫んでいた、

 

「テメェに桜の何が分かるんだ!!!!!」

 

我ながら書いていてキツイものがある。

 

ただ僕にとって桜は「幸せになって欲しいキャラ」の筆頭であった。

いわゆるアニメブーム黎明期によく言われていた『〇〇は俺の嫁』的な、『自分対キャラ』の非現実的な恋愛感情とはまた違い、どちらかというと物影から見守っていたいような、彼女個人の幸せな結末をつい望んでしまうような、そんなキャラだった。

 

こうして今改めて考えてみると、この感情はどちらかというとドルヲタの「推し」的な感情に近いのかもしれない。

 

とにかくそうした経緯で、当時まだ存在していない言葉ながら、確実に高校生当時の僕の『推しメン』であった桜に対し、不意に浴びせられたAからの罵倒。

 

こうして虫も殺さないような大人しい僕が生まれて初めて「他人の胸倉を掴む」という行為に出たがわけだが当然ながら案の定の大苦戦、都合3~4回はモタモタと掴み直してAのTシャツの襟周りはゆるやかに伸びていった。

 

もとより夜道で光る他人の家のサーチライトにもビビり散らすほどノミ心臓のゲバラだが、持ち前の身内弁慶とライトノベル仕入れた知っている限りの汚い言葉を用いて精一杯の口撃を開始した。

 

「いいか?お前ごときが桜のこと知った口で語るんじぇねぇぞ?お前に桜がどんな気持ちであの幼少期からの日々を耐えてきた先でやっと士郎(主人公)と出会えた事でどれだけ人生が明るく開けたか分かるか?お前みたいな安易に幼女枠に収まる思考停止型のロリコンは一生『イリヤたんprpr』とか言ってろ!おは幼女ロリこんにちはペドフィリわんこそばとか毎日言ってろクソが!」

 

『お前黙って聞いてりゃ随分言ってくれんじゃねぇか!俺がロリコンかどうかとかじゃなく世界共通の真理としてJKなんてとっくにBBAなんだよ!それに事実を言って何が悪い!お前だって桜ルート完走して内容知ってんだろ?見てねぇ聞いてねぇ興奮してねぇとは言わせねぇぞ?お前みたいな善人ぶるヲタクが一番しょうもねぇんだよ!』

 

「なんだとテメコラ!もうお前かえれ」

 

『は?何言ってんのお前、ココ俺んちだよバーカ』

 

「いや家じゃなくて土に還れ」

 

『あ?』

 

と言葉ばかりは威勢がいいが、互いにまったく手が出ない。

それもそのはず、双方クラスの隅っこの三角コーナーで腐臭を放つ生ゴミ系男子だったゲバラとAは当然ケンカなど生涯一度もしたことがなく、人の殴り方など元より知る由もなかった。

 

そのため両者弱過ぎて決着の付かない泥仕合ラップバトルのような罵り合いはその後もズルズル続いた。

 

そして互いを罵り合いながらも僕とAは、次第に薄々勘づき始めていた。

このやり取りは不毛だと。

時間と体力の無駄遣いだと。

 

この広い世界の中で、人に与えられた時間は平等である。

誰かを笑わせても1分。

誰かを悲しませても同じ1分。

道端の花の美しさに心震わせても1分。

モテないヲタク同士で存在しない女を巡って口論になっても同じ1分。

恵まれない国の子供たちを想って涙を流しても1分。

かつて一緒に汗を流しながらアニメイト本店の長い階段を昇った日々を忘れ、実際には居もしない女の話で朝まで生テレビより熱いテンションで口喧嘩をしても1分。

 

考えてみればこんなに悲しいことは無い。

同じ時間に違う場所では、美男と美女がデートをしているかもしれない中、マンガと同人誌と二次キャラ抱き枕の散乱した部屋でブサイク二人が罵り合っている。

こんなに切ない対比はない。

 

脳内BGMの「and I love you(♪Mr.Children)」に合わせて、罵り合うブサイク2人と愛し合う美男美女の対照的過ぎる風景がスロー映像で浮かんでくるようだった。

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傷つけ合う為じゃなく

僕らは出会ったって言い切れるかなぁ?

 

そう。きっと僕らはこうして傷つけ合う為に出会ったわけではなかったし、きっと桜も僕らを傷つけ合わせる為にこの世に生み出された訳ではなかったはずだ。

 

口ベタでシャイで内向的で、好きな物を通じてしか人と仲良くなれない。

きっと桜は、そんな歪なキモヲタたちを繋ぐ架け橋になってくれる存在であったはずだ。

 

なのにどうしてこうなってしまったんだろう。

 

たった一人の女のせいで、永遠に思えた僕等の友情はなぜこうも儚く引き裂かれてしまったんだろう。

オザケンと小山田もこんな心境だったのだろうか。

 

かくして口論は激化の一途をたどり、もはや互いの人格否定も含めてドン・フライVS高山戦並にノーガードの殴り合いが続いた(※口だけ)。

 

(もうコイツとの仲は一生修復できないだろう)

 

悲しいが、僕は自分の中でそう折り合いをつけ始めていた。

こんな些細なことで親友を失うことになるとは。

 

そんなことを思っていると、Aの母親が手土産の菓子を持って帰ってきた。

 

高貴な家庭の奥様らしく「みんなで食べましょう」と、2階のAの部屋にいた僕等に向かって、状況も知らずに呑気に呼びかけてくる。

 

冗談じゃない、勘弁してくれ。

今のこの険悪な空気の中で、僕とAが仲良くおやつなど食える訳がない。

Aを見るとどうやら同じ心境のようだったが、そこでAは控えめにこう言った。

 

「一応見るだけ…見にいく?」

 

依然その顔からは闘気は消えていなかったものの、意外な提案に僕は思わず、

 

「お、おう…一応な。買ってきてもらって悪いし、顔くらい見せねぇとな、」

 

と返した。

 

 

そして数十分後。

僕とAは仲良くおやつを食っていた。

高級洋菓子に舌鼓を打っているうちに桜の話題は空中で霧散し、食後には愉快にスマブラに興じた。

 

人より多く屁理屈を垂れたところで、しょせん当時の僕らはどこにでもいる高校生のガキだったのだろう。

そんな僕らを知ってか知らずか、桜はいつまでも静かに微笑んでいる。

 

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高校生当時の僕等の事を、後輩キャラという設定どおり「先輩♪」と呼んでくれた桜だが、その後こちらが一方的に歳をとり続けたせいで、今やその差は一回り近くにもなってきた。

 

それでも桜は、いつまでもレモンの弾けない僕等のことを変わらず「先輩♪」と呼び続けてくれる。

 

最後に、互いを許し合えなかったかつての僕等に向けつつ、この曲を紹介することでブログを締めようと思う。

 

曲は、間桐桜(cv下屋則子)で「笑顔ひとつで」。

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P.S.

 

Fate」シリーズについては大人気による派生に次ぐ派生で今や種類が多すぎて、初見の方は混乱するかもしれませんが、基本的には「Fate/stay night」と「Fate/Zero」を見ておけばいいと思います。

 

ちなみにアニメは過去複数の会社により制作されており、昔の「DEEN」版はやや出来が悪いので、できれば最近の「ufotable」版を見ることをオススメします。

 

詳しくはこの動画でほぼ分かるので興味あればぜひ!

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最後に、そんな桜がメインヒロインを務める通称「桜ルート」こと「Heaven's feel」編は現在映画として制作されており、このブログを書いている2018年5月時点では、全3章のうち1章目のみ公開されています。続編も鋭意制作中とのことなのでお楽しみに。

 

上の動画でも言っている通り、第1、第2ルート視聴後でないとやや話に置いて行かれるとは思いますが、絶対面白いと自信を持って言い切れるのでよければ色々調べて見てみてください。

 

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では、ここまでお付き合いありがとうございました。

ほな!

 

推しメンが髪切ってメンブレしたヲタクの話(前編)

拗らせヲタクの生態ほど面白いものはない。

できることなら常に誰かしら拗らせヲタクの様子を遠巻きに監視していたいとすら思う。

これはそんな拗らせヲタク愛好家のはずの僕自身が拗らせてしまったという1人パワーボム的なお話

 

ディス〇バリーチャンネルに重課金しても決してお目にかかれない限界ヲタクの貴重な生態を、珍しく読みやすい文量と内容に見合わない生意気な前後篇でお楽しみあれ。

 

3/16(金)

花金を折り返し悦に入っていたところに届いた推しメンのブログ更新通知という名の福音。

途端に輝きを増す昼休憩。

今回も「男装・女心指南・ほっこり家族話」というサ〇エさんも裸足で逃げ出す鮮やかな三本立てを披露した揺るぎねぇ推しメンことAIS(アイス)、橋本麗愛(はしもとれな)ちゃん。

溢れるサービス精神に加え、意識と鼻の高さがありがたい。

可愛い顔面画像を見ながら、上がるテンションと下がる目尻。

心の大泉〇郎もすっかりウレション状態である。

ブログについても「画像、改行、冗談、マジレス」全てにおいて羽生くんのフリー並に無駄のない構成でいつもながらヲタクは舌を巻くばかりであった。

ameblo.jp

 かくして存在しないアゴヒゲを得意気にイジりながら推しメンの魅力と文才に陶酔するだけの贅沢な昼休憩が過ぎ、午後の勤務も終えてルンバより厳かに帰宅。

待ちに待った週末がやってきて心はとうにフル〇ンである。 

しかもこの日は夜からAISのShowroom配信が予告されていたので、より一層血色の良い顔で花金の夜の充実した在宅ライフを楽しんだ。

 

ほどなくして時間となり、待ちに待ったShowroom配信が始まった。

視聴は現場同様ノーコメ・ノーギフトでひたすら推しメンを見守る安定のサイレント地蔵スタイルを決め込んだ。

そして流れ始めた映像を見ているとあることに気付く。

推しメンがいない。

おかしいな?と思いつつもしばらく様子を見ていると予想だにしなかった意外な展開が待っていた。

 

 

youtu.be

 

推しメンが髪を切っていた(※動画30秒頃)。

PCで配信を見ていた僕は、画面に推しメンが出てきた瞬間一体何が起こったのか分からなかった。

長かった推しメンの髪がなくなっている。

体の後ろに隠して「ボブにしました~♪なんちゃって嘘で~すw」みたいなクッソしょうもないネタでもない、正真正銘の断髪だ。

一体なにがあった推しメン?悩みなら言ってくれればいつだって俺が(券を積んで)聞いたのに。

しかし流れた時は戻らない。

それに何も推しメン自身がいなくなったわけではなく、今もこうして目の前にちゃんといる。

冷静に考えて何も失っていないじゃないか。

俺は何を取り乱しているんだろう。

我ながらバカだなぁ、はははwなどと思いながらしばらく見ていたshowroomが終わりふと我に返る。

 

その夜、僕は寝込んでしまった。

 

【つづく】

読むドルヲタ落語「死神」

overture(出囃子)

 

youtu.be

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(※元ネタ「死神」のあらすじ(※動画

 

酒に女に散財し、借金で首が回らなくなった男。

ついに妻子にも見捨てられ「こうなったら死のう」と首を吊る算段を立てる。

 

「しかしどうやればいいのか」

 

そう頭を抱えているとどこからか不気味な老人が現れ、「まだ死ぬな」と男に話しかける。

驚いた男が怪しんで素性を尋ねると「俺か?俺は死神だよ」と老人。

 

聞くと「お前にはまだ寿命がある。それより金儲けになるいい事を教えてやる。お前は医者になれ」と死神。

 

なんでも、大病で寝たきりの患者には人の目に見えない死神が付いており、その死神が枕元にいれば病人は寿命で助からない、ただし足元にいる場合は呪文を唱えて退散させることができる、とのこと。

 

「特別にお前にも死神が見えるようにしてやる。呪文は『アジャラモクレン キューライス テケレッツのパ』と唱えてから手を二つ打て。ただし、もし死神が枕元にいた場合は絶対に何もするなよ」

 

そう言うと死神はいなくなった。

その後、男は半信半疑ながら寝たきりの病人を探し訪ねてみると、たしかにその足元には死神が座っていた。

 

言われた通りに呪文を唱え手を二つ叩くと、足元にいた死神はすぐさま消え、途端に病人は飛び起きる様に元気になった。

こうして男は「街の名医」として時の人となり、方々で引っ張りだこ。

たちまちに財をなした。

 

しかしせっかく作った大金をまたも酒と女で使い切ってしまう男。

 

「なぁに、金ならまた医者やって儲ければいいさ」

 

そうケラケラ笑っていたのもつかの間。 

その後は思うように患者が来ない。

更にやっと来たと思っても枕元が続き、さすがの男も焦り始めた。

 

そんな時、ある大富豪からの依頼があり患者を訪ねてみるも死神はまた枕元。

男が諦めて帰ろうとすると、「治してもらえれば1万両差し上げます」と引き止められる。

ここで大金に目がくらんだ男。

病人の布団の四隅に男四人を配置し、死神がウトウトした隙にせーので持ち上げて布団を半回転。

死神が足元にきたところですかさず呪文を唱えると、驚いた死神は一瞬で消え去り、途端に病人は全快。

かくして大金を手にした男が夢心地で帰路を歩いていると、「なんであんなことをした」と最初に会った死神が再び現れた。

なんでも、男がルールを破ったせいで死神は制裁の憂き目にあったという。

 

「俺と一緒に来い」

 

そう言われ男が死神に連れられて入った洞窟の奥には、無数のろうそくが灯っていた。

聞くと、このろうそく一本一本は全て人間の寿命なのだという。

 

「おや、ここにずいぶん短いのがありますね」

「それはお前の寿命だ。」

「えっ…!?」

「今朝まではその隣にある長いろうそくがお前のだったが、金に目がくらんだお前はあの病人と寿命を換えたんだ。そのろうそくの火はもうすぐ消える。それが消えたらお前は死ぬよ。」

「そ、そんな…か、金なら全部お前にやるから!なんとかしてくれ!助けてくれ…頼むよ!」

 

男がそう懇願すると、死神は燃え残りのろうそくを手渡しながらこう言った。

 

「これに火を移し換えることができたら、それが新しい寿命になりお前は生き永らえる。ただし、失敗したら死ぬ。はやくしないと、消えるよ。」

 

男は慌てて火をつごうとするが、手が震えてうまくいかない。

 

「どうした?何を震えている?ほら早くしろ、消えると死ぬよ。消えるよ…消えるよ…ほうら、消えた。」

 

<読了目安→約20分程> 

 

 

(※この物語はフィクションです。諸々ご了承の上でお楽しみください)

 

え~、毎度いっぱいのお運びありがとうございます。

 

ご覧の通り久々のネタブログということで、えぇ、まぁ私自身、若干の緊張があることは否定できないのですが、何を期待したのかこんな駄エントリを開いていただき、地味に長い元ネタ解説も消化の上、今こうして私の文章を読んでくださるヒm…じゃなかった、心優しい皆様に厚く御礼を申し上げつつ、ご期待に沿えるよう、最後まで真面目にふざけられればと思う次第でございます。

 

 さて、推しは変えずに話は変わりますが、日本には元来、八百万の神がいるといわれております。

 

それこそ神羅万象多種多様、大から小まであらゆる事物に神仏が宿るとされております。

 

まぁとりわけドルヲタにとっての「神」といいますと、握手会での「神対応」なんてワードがメジャーかと思いますが、そんな「神対応」を受けるための架け橋になるのが、”特典券”と名付けられた小さな「紙」だってんだから皮肉が効いていますネ。

 

汗水垂らして稼いだ大枚を「神」に捧げて「紙」に換えるってんだから甲斐甲斐しいことこの上ありません。

その上いざ握手会行ったら行ったで、緊張で上手く話せず自分が「噛み様」になっちまうってんだから愛らしい。

 

思えば世の中が48に染まり始めた頃から、日ごと聞く機会が増えたように思うこの「神」という便利な言葉。

 

最近では神の使いを名乗るアイドルグループも出てきたということで、是非この停滞したアイドル業界にその名を轟かせ、退屈に慣れ切ったヲタク達を激情に駆り立てながら、綺羅星如く 輝いて欲しいと願うばかりでございます。あと渋谷ワンマン超楽しかったっす。

 

 しかしこうして書くと一見「ありがたさの象徴」のようにも思える神ですが、神は神でも出くわしたくない神もおります。

 

中でも「死神」なんてぇと、こりゃあんまりお付き合いしたくねぇ神様なもんで…

 

 

 

・・・

 

 

 

「認知は命より重い」

 

そんな間違った福本イズムを信条とする厄介ピンチケがここに一人。

その男、姓は略して名は下腹(ゲバラ)といった。

 

何を隠そうこの下腹、大を飛び越えdieが付くほどのアイドル好きであると同時に、三度の飯より認知を求めるステレオタイプのかまってちゃん。

 

昼夜問わないガチ恋リプと、あらゆる生活費を切り詰めた末の限界財力に物を言わせた地獄の接触鬼ループで、方々の推しメンに油汚れよりもしつこく過粘着するというブ◯ース・ウィリスも裸足で逃げ出す大ハードっぷり。

 

その上ろくに通っていない現場でも後から来て厚かましく最前に割り込んではガン開きの瞳孔で射貫くように推しを見つめながら野獣のようなコールと下手糞なフリコピで傍若無人に騒ぎ散らした挙句、ライブが終わるとレスや目線の多い少ないに分かりやすく病み落ち込み嘆きツイって一人勝手に心潰える生粋のメンヘラ厄介クソヲタクだった。

 

ことライブにおいては「最前0ズレ」を譲れぬモットーとする下腹だが、皮肉にもヲタクとしての自分のズレにはいつまでも気付く気配がなく、ネットを覗くと常にワニ〇ニパニックもビックリの散々な叩かれっぷり。

 

ただ当の本人はそんな事も露知らず「無邪気で無自覚で度を超えたハイパーポジティブ」というピンチケスキルの大三元をいいことに、嫌われヲタク界隈に日々ディープなインパクトを与え続け、一人いつまでもハルウララかな毎日を桜花しているのであった。

 

そんな下腹にとってもはやリフトサーフモッシュ女ヲタヲタなどは挨拶代わりのライフワークであり、「今後いつ新木場〇ーストに不法侵入しても不思議はないな」という周囲からの評価も至極妥当なものであった。

 

しかしそうして日々全方位厄介を続けるこの男にも、一つだけ大きな悩みがあった。

 

「あぁークソ!なんで俺が推すアイドルはすぐ居なくなるんだよ!」

 

そうこの男、『下腹が推すアイドルは絶対にすぐ辞める』と誰もに言わしめる呪われたヲタクであり、周囲が彼を『死神』と呼ぶまでそう時間はかからなかった。

 

まぁそもそも『素行が悪い下腹が通うことで現場が荒れ、客が減ってグループの雰囲気が悪くなり、結果として推しメンが辞める』という至極真っ当な流れこそあるものの、オツムの足りない自己顕示欲の塊魂な下腹にそんな小難しい理屈が分かるはずもない。

 

こうしていつしか界隈を超えて、どこのヲタクもこの下腹の動向に気を払うようになり、その誰もが(ウチの現場にだけは来ないでくれ…)と手を合わせ心から祈るのであった。

 

中には(下腹が自分の推しを推し始めた)という噂を聞いて、声を上げてその場に泣き崩れたヲタクもいたという。

 

しかし当の本人はそんな事を全く知る由もなく、今日も今日とて推しメンの卒業公演へと足を運んでいた。

 

最後のMCを聞きながら「なんで辞めちゃうんだよ〇〇ちゃぁん…」と半ベソかきながら言葉を漏らす下腹の周囲には、(いやお前の推し方が重すぎたから辞めたんだよ)という周囲のヲタからの無言の思念が漂っていたが、そんな空気を察する能力ももちろんこの下腹にはなかった。

 

そうしてイベントが終わり、また一つの別れを経てしょぼくれた足取りで帰り道を歩く下腹。

自然とやるせない気持ちになり、誰に言うでもない独り言の愚痴が止まらない。

 

「あぁ~チクショウチクショウ!なんだって俺の推すアイドルばっかすぐ辞めるんだ!!散々『一緒にもっといい景色見ようね』みたいな事言うから、こっちだって純粋に応援してあげたいと思ってライブ行って特典会行ってTwitterもインスタもShowroomもツイキャスLINE LIVEもAbemaTVもアメブロもLINE BLOGもはてなブログもCHEERZもyellもGroupyもmystaも全部見て聞いてコメして課金してるのに何ですぐいなくなるんだよ俺はもう何を信じればいいんだよぉ!!!(超早口)」

 

そんな荒々しい独り言の合間、一瞬だけ生まれた息継ぎの空白に「ピロ~ン♪」という間の抜けた通知音が鳴った。

何かと思い下腹が自分のスマホを見てみると、急上昇中のはてブロ記事のオススメ情報が届いたようだった。

 

「なになに…アイドルを辞めた推しメンに会いに大阪に行ってきた話ぃ?はぁ?ふざけんなよ!どーせ毎日西へ東へKSDD三昧の癖にこういう時だけ『自分は推しメンがアイドルを辞めてからもこうして甲斐甲斐しく会いに行く優しくて純粋なヲタクですよ~(作り声)』みたいな謎アピールしやがって!偶然マグレでまとめサイトに取り上げられて一時的にビュー数伸びたからって調子乗ってんじゃねえぞ!自分に都合のいい事ばっか小綺麗に書きやがって!大体このお涙頂戴ブログがバズってから確実にネタツイの切れ味落ちたどころか、笑いでふぁぼ稼げない時に置きにいった綺麗事ツイートして不足分の承認欲求満たす悪癖まで付けやがって!受けようがスベろうが正面から『ネタツイ師』を自称してネタに生きネタに死ぬヒリついた毎日を送っていたあの頃のお前はどこに消えたんだよ!?独身時代散々遊んでおきながら結婚した途端に愛妻家キャラになって純愛を語り始める俳優かお前は!感性も体型も日に日に丸くなりやがって恥を知れ恥を!」

 

と、ムシャクシャした気持ちを当てつけるように何故か某特定個人をボロクソに叩く独り言が止まらない。

ついにヲタクが最も発してはいけないあの言葉を口にする。

 

「あぁ~あ、推しメン辞めちゃうしレスも来ないし…もう今の現場他界しようかな…」

 

【本当に他界する奴は『他界しようかな』とか言わない】というありがたい先人のお言葉通り、内心まったくそんな決意のなかった下腹だが、そう言った瞬間どこからともなく小さな人影が現れ、天龍と本間を足して2で割ったような聞き取りづらい声でこう囁いた。

 

『他界するな…オメェにはまだ、ヲタクとしての寿命がある…』

 

「うわビックリした!なんだジイさん!?アンタ誰だ?」

 

『ワシか?ワシは死神だ…』

 

「し、死神って…あのオレンジ髪でセリフが棒読みの…?」

 

『違うわ!一護でもマカ棒でもない!『なんで実写版の白哉がMIY〇VIやねん』とか言うな!こちとら漢字時代からのファンじゃ!』

 

「いや別に後半のヤツは言ってねぇけどよ…ってか死神って〇IYAVIとか聞くのか…いやそんなんどうでもいいわ!それじゃアンタ…ホントに死神なのか?」

 

『あぁ。その証拠に今日はオメェにいい話を持ってきてやった』

 

「いい話?」

 

『オメェさっき、今の現場を他界するとか言ってたな』

 

「あ、あぁ…それがどうしたんだ」

 

『情けねぇからそういうことを安易に口にするんじゃねぇ…離れたい時に離れて来たい時に来りゃいいものを、推しに気に入られたいがたいがためだけに都合のいいこと言って、勝手に自分を縛るルールを増やして自滅しやがって。結果知り合いのヲタクに無駄な心配かける上に黒歴史ツイートが増えるだけだ』

 

「あぁ…考えてみりゃ確かにそうだな…でもよぉ、俺はもう耐えられねぇんだ。あれだけ毎日ライブも物販も通ってんのに最前にいても全然レス来なかったり、俺だけふぁぼもリプ返も干されたり、挙句にゃすぐ夢だ学業だ繋がり解雇だと理由つけて次々と推しメンが卒業して行っちまったりよぉ…なんで俺ばっかり報われねぇんだ」

 

『簡単なことさ。それはオメェがオメェのことしか考えてねぇからさ。見返りを求めたらそれはもう応援じゃねぇ』

 

「知った口でもっともらしいこと言いやがって…それに、だったら俺にどうしろってんだ…」

 

『簡単なことさ。オメェはドルヲタ専門のカウンセラーになれ』

 

「は?カウンセラー?」

 

『そうだ。ちょうど今のオメェみてぇにヲタ活が上手くいかなくて気持ちがクシャクシャになっちまってるヲタクを訪ねて、話を聞いて気持ちをスッと落ち着けてやるんだ。そんでもって、その報酬として金を貰うって流れだ。』

 

「いや道理は分かるけどよぉ、俺に相談役なんて無理だぜ?病んでるヲタクの話なんて2秒も聞いてらんねぇよ」 

 

 『まぁ話は最後まで聞け。大抵病んでるヲタクには人の目には見えねぇ死神が憑いてる。その死神が憑いてる事が、ヲタクとしての死期が近く他界間際であることの証明なんだが、ある呪文を唱えることでコイツを退散させられる』

 

「なんだいその呪文ってのは?」

 

『<アジャラモクレン イエッタイガファイボワイパー イマキタバッカリー>と言ってからパンケチャを二回打て』

 

「なるほどな。なんかリリイベに遅刻してしか聞けなかった〇コンヲタクみてぇだな」

 

『まぁ覚え方はなんでもいい。しかし3つだけ注意しとくことがある。

 

【その1】ライブ中にチェルノ(※中の液体をこぼすこと)すると危ないから、テンション上がってもサイリウムはあまり振り回すな

 

【その2】病んでるヲタクに憑いてる死神はケチャもしくは背面ケチャをしてるんだが、呪文で退散させられるのはケチャをしている死神だけだ。背面ケチャをしてる死神は完全にキマってて手に負えないから絶対に手を出すな。

 

【その3】ライブでサイリウムを振る時はチェルノ(※中の液体をこぼすこと)しないように周囲をよく見て注意しながら使え。

 

以上だ。分かったな?じゃあ試しに一回呪文を唱えてみろ』

 

「いや1つ目と3つ目同じじゃんか。う~ん、どうも胡散臭いな。まぁいいや、試しに一回くらい付き合ってやるよ…えぇと、なんだっけ?たしか<アジャラモクレン イエッタイガファイボワイパー イマキタバッカリー>パン!パン!…と、こんな感じか?おい死神さん、これでいいのか?…ってあれ、死神さん?おかしいなさっきまでそこにいたのに」

 

気付くと下腹が呪文を唱え終わった時には死神の姿はなかった。

こうしてろくに自分のメンタル調整もできない癖に「ドルヲタカウンセラー」という時代を先取りしたフリーランス職に就いた下腹。

 

その後「やってダメなら逃げりゃいい。物は試しだ」と半信半疑ながらカウンセラーを自称して病んでるヲタクをネットで募集してみると意外にもすぐ連絡があり、直接会って話す運びとなった。

 

当日、いざ合流場所に着くと確かに相談者と思しき人物の背後に死神が憑いていた。

そして周囲を見渡すとどうやらその死神は下腹にしか見えていない様子。

更に先の話で聞いた通り、死神は相談者の後ろでひたすら虚空にケチャを打っている。

 

その様は見るからに血気盛んでつけ入るスキがなかったため、下腹はひとまず相談者の話を聞き、呪文を唱える機会を待つことにした。

 

「あ、どうも下腹です。あなたがDMをくれた…」

 

『あ、はい、『白銀の騎士~パラレルオーディン~』です』

 

「うん長い。名前に”~~”←コレ入れちゃうと色々システムが複雑になるよ?まぁいつでもカードゲームに参戦できそうで心強いや。じゃあ、ひとまず今日は『ハクちゃん』と呼ばせて貰うよ。で、ハクちゃんの相談ってのは何だい?」

 

『はい…今行ってる現場で推しメンが2人から先に絞れなくて…本人たちにも『結局どっち推しなの?』って迫られてるんですが、全く結論を出せずにいたら優柔不断だと怒られて、どちらとも気まずくなっちゃって…』

 

「なるほどね。確かにそいつは面倒だが気持ちは分かるぞ。ヲタクはアイドルの良いとこ見つけることに関してはプロだからね。同じグループに好きな子が2人できちまうのも分かる。だけどよ、だからって無理に結論出さなくていいんじゃねぇか?たしか俺の知り合いにも全く同じ状況になってテンパった挙句、『春夏と秋冬に分けて交代で推すわ』なんて謎ルールを作ったヲタクがいたんだが、事もあろうに夏が終わって推しが切り替わった瞬間にレギュが上がって現場モチベが下がり、そこからほとんど接触行かないまま秋冬が終わった結果、両推しのバランスが崩れて今だかつてなく気まずい状況になってたな。いいか?世の中にはそんな情けねぇ奴もいるんだ。相手に多少言われたからって、変にカッコつけて無理に結論出すのは違うと思うぞ。素直に『今は2人とも同じくらい好きだから、これから単推しにならざるを得ないようなライブを見せてくれ』って両方に言って、それからじっくり自分の本心に向き合うってのも悪くねぇんじゃねえか?」

 

『なるほど、たしかにそれはそうですね!』

 

と、意外にも親身に相談に乗った下腹の言葉で、悩んでいたハクちゃんの気持ちは少し晴れたようだった。

すると、ハクちゃんの後ろにいる死神が一気に弱ったように見えたので、下腹はすかさず教えられたとおりに呪文を唱えた。

 

『<アジャラモクレン イエッタイガファイボワイパー イマキタバッカリー>パン!パン!』

 

その瞬間死神はうめき声を上げて消え去り、ハクちゃんの目には神々しいまでの光が宿った。

 

『あれ?なんだか一気に気持ちがスッとしました!ありがとうございます!これほんの少しですがお礼です!』

 

下腹が手渡された封筒を受け取ると、それは手に持っただけで相当な額であることが瞬時に分かった。

そしてハクちゃんは、清々しい笑顔でそのまま次の現場へと向かって行った。

 

 

こうして見事に大金を手に入れた下腹。

 

「なんだこの金額!?世の中にこんなにラクな商売はねぇな!それに俺、自分で思ってたよりよっぽど聞き上手だな!」

 

と一気に調子に乗り、更なる大金を得ようとネットで次の相談者を即募集。

 

そうして立て続けに何人もの悩めるヲタクを救っているうちにウワサがウワサを呼び、またたたく間に有名になった下腹。

 

その名前は各まとめサイトからナ〇リー、果てには吉〇豪の口からも頻繁に出るようになり、完全なる時の人として時代の耳目を集め、日々病んでるヲタクを救いつつ大金を稼ぐ生活が続いた。

 

「だけどどんなに大金稼いでも今そこまで熱持って応援してる推しメンもいねぇしな~、そこまで現場行きたい感じでもねぇしなぁ~」

 

と、言いながらも結局他に行くところがないのでなんやかんや現場に来ちまうのが一般的なヲタクの土日。 

 

時にガチマジ、時にneo tokyo、時にプリンセス…と毎週様々な現場に出向き、見事なまでのKSDDぶりを見せる下腹だが『もし好きになっても、自分が応援することでまたいなくなってしまうかもしれない』というトラウマから臆病になり、なかなか新たな推しメンには出会えないまま月日が過ぎた。 

 

「もう一生、熱心に応援できる推しメンには出会えないかもな…」

 

そんな哀愁を漂わせながら、ある日なんとなく見にきた無銭フェスで少しだけ気になった子がいたのでこれまたなんとなく個別握手に並んだ下腹。

 

下腹「こんにちは~」

アイドル『え、もしかして下腹さん!?』

「え、なんで知ってんの?」

『知ってるよ!この前ネットニュースに出てたもん!悩めるヲタクを救う天才カウンセラーヲタクだって!え~会えて嬉しいなぁ♪来てくれてありがとう♪』

「えwあwそれほどじゃないけどw」

『自分の事だけじゃなくて、他のヲタさんの楽しいヲタ活をサポートできるなんてすごいよ!ほんと尊敬する!』

「そんなことないよ、それに君だってライブで色んなヲタクを笑顔にしてるじゃん。やり方は違うけど同じことしてるだけだよ」 

『あ、そうだね!じゃあサポート仲間だね♡』

「そ、そうだね…///(ヲタクスマイル)」

スタッフ(お時間まもなくで~す)

『あ、また来てくれる?』

「うん、でも…俺が推すと…」

『知ってるよ。死神って言われてるんでしょ?私がアイドル辞めないでそのジンクス覆すから、よかったらこれから応援して?』

「う…うん!分かった!あの君、名前は?」

『私、押見忍子(おしみおしこ)!『忍子に推し込み惜しみなし!』って覚えてね♡』

「忍子ちゃん♡うん、わかった♡」

『またね♡(両手振り見送り)』

(お時間でーす)

 

・・・

 

【その日の帰路】

 

「あぁぁぁぁぁぁあぁぁああああ忍子しかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ」

 

やっぱりこうなった下腹。

たった数分の握手でサ〇ウのごはんより簡単かつホカホカに出来上がった。

 

帰り道では終始この某オクタゴン級の咆哮で街中を騒然とさせ、「世界よこれが限界だ」と言わんばかりにモチベのフルテンを振り切ったテンションで、初号機や山〇孝之を軽く凌駕する愛を世界の中心から叫び散らした。

 

その後カウンセラーで稼いだ金を全自動で忍子につぎ込んでいく機械と化した下腹は、

 

『ライブ中見えてたよ♡』

『私のことだけ見てて?♡』

『下腹さん来てくれるとライブ盛り上がるんだ♡』

『ブログコメ読んだよ!超嬉しかった♡』

 

などの接触教科書3ページ目にある基本技でいとも簡単にメンタルを極められる程には忍子に入れ込み、たった数か月ですっかり愛の奴隷となっていた。

 

「あぁ忍子ぉ…忍子ぉ…俺もう忍子なしじゃ生きてけないよ…やばいもう2日も会ってないムリ限界〇ぬ早く現場行かなきゃ…」

 

と、ヤクでも切れたようなテンションでのたうち回っていると、不意にあることに気付く。

 

「あれ?金って、もうこれだけしかなかったっけ?」

 

忍子に出会ってからというもの、先の事を考えず常に特典会の持ち時間いっぱいまでフルスパークで積み続けてきた下腹。

当然その持ち金は既に底をついていた。

 

「マージか、メンドくせぇけど久々にカウンセラーやんねぇとだな…」

 

そうして再度ネットでヲタクカウンセリングの募集をかける。

多少間は空いてしまったが、それまで順番待ちができるほどに人気だった下腹のカウンセリング。いくらなんでもそうすぐに人気が下火になることはない…などという下腹の思惑はスタバの新作のよく分かんねぇイチゴのヤツくらい甘かった。

 

数日待っても相談者はゼロ。

焦った下腹がエゴサをすると、(話題になった途端カウンセリングの回数がめっきり減ったし今までの相談者は全員サクラだったんじゃねぇの?)などという憶測が飛び交い、かつてのカルト的人気から一転、既に『ヲタクカウンセラー下腹』の名前は仁義なきインターネットの世界に転がる薄汚れたサンドバックの一つとなっていた。

 

「ってか”ヲタクカウンセラー”って何?w」

「あいつドヤ感出してくる割にツイートつまんないよねw」

「ってかブログ長すぎじゃない?暇人乙www」

 

等々…心無い書き込みも多数見られ、もはやかつての盛り上がりの面影すら残らない程に周囲からの評価は冷めきっていた。

 

こうしてなかなか相談の来ない日々に、下腹はイラ立ちを募らせた。

更にやっと依頼が来て相談者に会いに行くも、憑いている死神が背面ケチャで手出しできないことが続き、下腹のイライラはもはやピークに達していた。

 

「あぁチクショウ!!なんでまともな病みヲタクが来ねぇんだよ!どいつもコイツも背面ばっかだし、オマケにネットじゃアンチが好き勝手言いやがって!!あぁイラつく!!いや、だけどそんなことより…」

 

叫びながらスマホを取り出し、接触のログを遡る下腹。

気付くと最後に忍子に会ってから、すでに数か月が経過しようとしていた。

 

「あぁ一刻も早く忍子に会いに行かないと本当に認知切れるぞ…いま忍子のグループ人気出てきてヲタク増えてるし、やっといなくならない推しメンに会えたってのに今度はこっちがいなくなってんじゃねぇか…忍子の認知切れたら俺は…俺はもう…」

 

頭を抱え小刻みに震える下腹。

(いや普通に働いてヲタ活費稼げばいいじゃんw)みたいなネタブログの本質を真っ向から否定しかねない読者の声も、もはやその耳には届かない。

 

するとそこに一通のDMが届いた。

内容を確認すると、それは待ちに待ったカウンセリングの依頼。

しかもその送り主は、業界随一の天空レギュレーションでお馴染みの『意地のコンプライアンスガール』、通称『意地コン』の超絶金持ちTOからの物だった。

 

なには友あれ速攻で面会をセッティングする下腹。

初対面の挨拶もほどほどに、道玄坂はなの舞でオムそばをワケワケしながら早速本題を切り出した。

 

「改めてはじめまして、下腹です。えぇ~っと、たしかお名前は…」

 

『はい、『金色の騎士~ゴールドカードエクスプレス~』です』

 

「アレもしかして兄弟?まぁいいや。長いのも”~~”も慣れてるからスルーするよ。やっぱ金持ちだけあって名前も豪華だし適度にふざけてていいね。まぁとりあえず今日は『コンちゃん』って呼ぶよ。そんなことより本題なんだけどさ、相談ってなにかな?」

 

と言いながら横眼でチラっとコンちゃんの背後を確認すると、残念ながらそこには尋常じゃないテンションで背面ケチャを打つ死神の姿が。

 

ガックリ肩を落とす下腹にも構わず、コンちゃんは淡々と語り始めた。

 

『いやね…今僕が推してる子についてなんですけど、僕はその子を加入当初から推してて、それ以降現場も全通してるんですよ。常に最前列でライブ見てきたし、特典会に行かなかった日もありません。なのに…なのに…推しメンの奴、最近ついた若くてイケメンなヲタクにばっかりレス送るんですよ!それだけじゃない…リプ返もアイツだけ長文だし、アイツとの接触はいつも盛り上がってるし、そんな様子を傍から見てると俺…悔しくて…やりきれなくて…』

 

「あーそうですか。それはそれは。大変でしたねー」

 

死神が背面と分かるや否や帰りたいオーラを全身から放つ下腹。

もはやまともに話を聞く態度ではない。

 

「じゃあとりあえずもうその子はイケメンに譲って、他の推しメンを探せば…」

 

『そんなこと出来るわけないじゃないですか!!!!!(オクタゴン咆哮)』

 

「いやそんな言われたって…(痛った…鼓膜破けたんじゃねぇのコレ?)」

 

『あの子は…あの子は俺の青春なんです…。それに、俺はもうあの子の一番になんてなれなくていい…だからせめて…せめてもう一回、初対面の頃の素直な気持ちでまたあの子に会いに行きたいんです。こんな嫉妬にまみれた醜い顔で会いたくないんです。お願いします。俺のメンタルをどうにかしてください。もし叶えてくれたら…(耳打ち)億円払います』

 

「え?(耳打ち)億円?…マ?」

 

『…マ。』

 

少しイラっとくるドヤ顔で略語を返すコンちゃんの目には、揺るがない決意の炎が灯っていた。

ここで下腹は一気に思考を巡らせる。

 

「(いや確かに(耳打ち)億円は欲しいけど…でも死神が…アイツが背面じゃ何の手出しも…背面じゃ…背面じゃ…ん?)」

 

と、そこである閃きが脳裏を走る。

 

「(背面じゃダメなら、背面じゃなくせばいいんじゃ…?)」

 

天啓とも思しきアイデアを得て一気にテンションの上がった下腹は、まずは死神を弱めるために、会話を通して全力でコンちゃんを励ますよう努めた。

 

「いいかコンちゃん?いくら口では平等と言ったところでアイドルだって人間だ。ヲタクの美醜や老い若いで差別が出るのはしょうがない。しかしだ、美醜は置いとくにしても若さってのは万人に平等だ。いま各界隈のオッサンが満面の笑みで応援してるJKもJCもJSも〇歳児も、いつか必ずババアになる。そのイケメンだっていつか必ずオッサンになる。それにコンちゃんだって、かつてそのイケメンくらい若い時期があったはずだ。平等なんだ。だからそれは羨むものじゃない。子供は大人に憧れて、大人は若さに憧れる。いつだってないものねだりだ。だからそこで相手の持ってる物を羨むんじゃなくて、他の奴にできなくて、自分が推しメンに還元できるものは何かと考えるんだ。ヲタ活は他のヲタとの競争じゃない。常にレーンは一つだけ。スタートは自分で、ゴールは推しメンの笑顔だ。当然「ヲタ歴が長いから偉い」というわけじゃないが、長く活動するグループの現場を作ってきたのは間違いなく結成当初から応援してきた古参だし、そういう古参がいたからこそ現場が続いてそのグループが新規まで届く。それに新規は新規で、現場がマンネリ化しないよう新しい風を吹き込んでくれる。だから偉い・偉くないじゃなく、どちらも必要なんだ。自転車の両輪みたく、両方ないといけないんだ。だから、コンちゃんもそのイケメン新規の彼に敬意は示しても決して嫉妬なんかしちゃいけない。そもそも同じ子を推してる同志だ。一度話してみればいい。きっといい酒が飲めるはずだ。」

 

『うっ…うっ…』

 

3秒で適当に考えた下腹の演説にまんまと胸打たれたコンちゃんが静かに泣き始めた。

大粒の涙が卓上のレモンサワーに一滴、また一滴とこぼれていく。

 

「だからな。(推しメンにとって自分は必要ないんじゃないか?)なんて思わずに、ただ(会いたい)ってだけの気持ちで会いに行けばいんだよ。そこに新規も古参もイケメンも関係ない。接触の数秒だけは常に自分と相手、コンちゃんと推しメンだけの世界だ。」

 

と、捲し立てながら下腹が死神を見ると、コンちゃんのモチベ上昇に伴い苦しむようにうめき声を上げながらその動きは次第に鈍っていった。

 

『すいません…ちょっとトイレに…』

 

そうしてコンちゃんが席を立った瞬間、「しめた!」と思った下腹は反り返ったまま虫の息で背面ケチャを打つ死神の両肩を、リフトを壊す時のボ〇ズよろしくガシッと掴み、そのまま力づくで半回転。

 

そうして実力行使でムリヤリ死神を通常ケチャの体勢にした下腹はここだと言わんばかりに…

 

「<アジャラモクレン イエッタイガファイボワイパー イマキタバッカリー>パン!パン!(超早口)」

 

『ウギャアアアアアアア』

 

途端、下腹にしか聞こえない断末魔の叫びを上げながら死神は消え去った。

少ししてトイレから戻ってきたコンちゃんは、

 

『下腹さん聞いてください!!!なんだか僕、いきなり気持ちがスッキリした気がして…』

 

「みなまで言うな。そのスッキリがトイレによるものじゃないって事は分かってるよ。たしかにコンちゃんのメンタルを整えたのは俺だけど、俺はあくまでキッカケをつくっただけに過ぎない。コンちゃんが自分を乗り越えられたのはコンちゃん自身の力だし、なにより推しメンへの愛の力だ。」

 

『下腹さん…(泣)』

 

「だからな…ほら、そんな湿っぽい涙なんか拭いて、今夜は朝まで飲もうじゃないか!」

 

『下腹さん…ありがとうございます…それじゃこれ、忘れないうちに渡しておきますね。(耳打ち)億円の小切手です』

 

「スッ)…あ、うん、ありがとっ。あっ…あ~!ごめっ…そういえば今日ちょっと俺あの、この後用事あったんだわ…ごめん、だからちょっとあの~オレ、あの、先帰るね!」

 

『え?いやさっき朝まで飲もうって…』

 

「あ、ほんとゴメン、冷静に考えたらそろそろ終電だしやっぱ今日はヤバイかなって。じゃこれお金ここ置いとくから。うん。あ、さっきのたこわさキャンセルしといて。じゃあね!」

 

そう言って貰うもんだけ貰ってさっさと店を出た下腹。

久しぶりに弾むような足取りで道元坂を下る。 

 

「フゥ~!!!にしても俺はなんて天才なのかね!背面で手出しできなけりゃ肩持ってクルっと回して正面にしちまえばいいって、なんでもっと早く気付かなかったかねぇ。しかしここぞの大一番でそれに気づいてこうして大金手に入れる辺り、やっぱり俺ってツイてるね!あはは!あははははははは!」

 

『たしかにオメェにゃ憑いてるぞ』

 

「うわビックリした!なんだアンタか、脅かすんじゃねえよw」

 

下腹が声の方へ振り向くと、そこには最初に会ったあの死神が立っていた。

 

「いやそんなことより聞いてくれよ死神さんよ!俺ったらツイてるっていうか天才っていうかさ、さっきあそこの飲み屋で大金を…」

 

『全部見てたから分かっている。ったく…とんでもないことをしやがって…オメェちょっとこっちに来い』

 

「うん?なぁ~にイラついてんだよ死神さんw」

 

『いいから黙ってついて来い…』

 

「終電までには帰してくれよ?w」

 

そう言われ浮かれた下腹が死神に付いて行くと、次第に周囲は暗くなり、足元を確かめるのがやっとというほどに視界が悪くなってきた。

 

「おい死神さんよ…こりゃ一体、どこに向かってるんだ…?」

 

『じきに分かる…ほら着いた』

 

急な段差や坂道を恐る恐る進んで着いた暗い洞窟の中には、無数の細い光が見えた。

辺りには低く不気味な振動音も響いており、それまで浮かれていた下腹も、徐々に血の気が引いていった。

 

「おいなんだここ…まさか…この世の地獄なんて言うんじゃ…」

 

『いや、渋谷Gradだ』

 

「いや近場かよ!どうりで階段急だしトイレのドアが宙に浮いてると思ったわ、、、じゃあこの振動音は…」

 

『ああこれか、『SURVIVE』だ。昔から好きなんだ。』

 

「いやMIY〇VIかよ!!なんで死神の推し曲が『SURVIVE』なんだよ!SURVIVEさせる気ねぇだろ!、、、ってなんだこの光…ん?サイリウム?」

 

よく見るとすり鉢状の渋谷Grad内には無数の使い捨てサイリウムが立っており、色とりどりの光を放っていた。

 

『見えるか?このサイリウム一本一本はオメェらドルヲタの寿命だ。モチベの高いヲタクのサイは強く明るく光ってる。逆に、他界もしくはヲタ卒が近い病みヲタクのサイは光が今にも消えそうに弱々しいだろ?』

 

「ふ~ん、なるほどねぇ。ちなみにこのサイの色って、」

 

『無論、推しメンのイメージカラーだ』

 

「やっぱりね。じゃあマーブル色に光ってるのはKSDDってわけか。お、このサイリウムずいぶん明るく光ってるねぇ」

 

『それはオメェが最初にカウンセリングした白銀の~』

 

「あぁ、ハクちゃんな」

 

『そう、ハクちゃんのだ。アイツはあの後男らしく2人のうちの1人を推しメンに決め、二推しの子にも誠実にそれを伝えた結果、両方と以前より仲良くなり最高に上手くいっている。今は推しメンの生誕委員にも関わっているようで、天を突くほどの高モチベだ』

 

「なるほどねぇ、そいつぁ良かった。そりゃこんだけ見事なウルトラオレンジにもなるわけだ。お、その隣にあるコイツは、もう見てて悲しくなるほどに光が弱々しいねぇ、ホントに今にも消えそうだ」

 

『お、数ある中からそいつに気付くとは奇遇だな。そいつはオメェの寿命だ。』

 

「なるほどねぇ、こいつが俺の寿みょ…え!?死神さんいま何て言った?」

 

『だから、その今にも消えそうなサイが、ドルヲタとしてのオメェの寿命だ』

 

「いやっ、そ、そんなバカなwだ、だいいち最初に会ったあの時、「オメェにはまだ寿命がある」って言ったのは、死神さん、アンタじゃねぇか!?」

 

『だからオメェはバカなことをしたというんだ。いいかよく聞け?あれほど背面ケチャの死神には手を出すなと言ったのにオメェはそれを無視してまんまと大金をせしめた。オメェはあの時、あのTOと寿命を取り換えちまったのさ。見てみろ。その隣に強く光ってるサイリウムがあるだろう?それが今朝までのオメェの寿命さ。もっとも、取り換えちまった今はあのTOのだけどな。フ…フフ…ハーッハッハッハ』

 

「いや、そ、そんな…あっ!でも!でもよ!俺ァ見ての通りこうして体もピンピンしてるし、忍子…いや推しメンに会いたいっていうモチベも燃えるようにある。なんだい、一個も他界やヲタ卒なんてしそうな要素が見当たらねえじゃねぇかw」

 

『哀れだなぁ…オメェ、ヲタクの他界がそいつ自身のメンタルの問題だけで起こると思ってんのか?いいか?他界やヲタ卒の原因なんて挙げりゃキリねぇくらいいくらでもあるんだ。異動、転勤、結婚みてぇな生活環境の変化から、推しメンの活休、卒業、繋がり解雇と理由なんていくらでもある。仮にオメェにモチベと財力があったところで、空がなけりゃ鳥は飛べねえし、現場が無けりゃヲタクは積めねぇ。あとな、もし(そのサイリウムの光が消えてもまた新しい現場で他の推しを見つければいいや)なんて思ってるんなら甘いぞ。そのサイの光が消えるってことはオメェのヲタクとしての全ての寿命が終わるってことだ。今後いくら現場変えようが推し増ししようが、ヲタクやってる限りオメェには永遠に悲しい結末が待っている。要するにジョジョ5部で言うディアボロみたいになるってこったな』

 

「そ、そんな…なんで俺だけ…なんで…」

 

とうとう膝から崩れ落ち泣き出した下腹。

それを見下ろすように死神は続ける。

 

『最初に会った時も言ったじゃねぇか…オメェはオメェのことしか考えてねぇ。見返りを求める応援は応援じゃねぇってよ…。オメェは一度でも相手のことを思ってカウンセリングしたことがあったか?あのハクちゃんも、いままで治してきたヲタク達も、そんでさっきのTOも、一度でも金目当てじゃなく純粋に助けてやりてぇと思って話を聞いたことはあったか?』

 

「うっ…うぅ…」

 

『まぁいい…俺もそこまで鬼じゃねぇし、何も命まで盗ろうって話じゃねぇ。どれ、オメェに一つチャンスをやろう。その今にも消えそうなサイリウムを中身がこぼれないように…要するにチェルノしないように分解し、この新品のサイに移し替えてから更に新しい溶液を入れて混ぜ合わせろ。一滴もこぼさずに全ての工程をクリアして、無事新しいサイを光らせることができたらそれがそのまま寿命になり、オメェはヲタクとして生き永らえる。』

 

「てっ、てめぇ…さてはこの展開を見越してあんなに不自然な流れでチェルノの説明してやがったな!?」

 

『フフ…文章力のない筆者のせいであれだけ悪目立ちした伏線に、ここまで気づかないとは愚かな奴だ。どうだい?ワシはこのままオメェのサイがただ消えるのを見ててもいいが、一応移せるかやってみるかい?』

 

「う、うるせぇ!…貸せっ!」

 

『おうおう乱暴なこった。そんなに慌てるとこぼすぞ?こぼすと切れるぞ?認知が切れるぞ?』

 

「うるせぇ黙ってろ!!やっと忍子に会いに行ける金ができたってぇのによぉ…俺はこんな所じゃ終われねぇんだ…レスも目線も推されもふぁぼもリプ返も全部オレにだけくりゃあいいんだ…ちくしょう、見てろよ…あっ、垂れる…っ…あ…クソッ!チクショウ…目に汗が入りやがる…も、もうちょい…あとちょっと…これを、…こうしてっ…あっ、で…できた!」

 

『え?』

 

「や、やった!移せた!移せたぞ!どうだ死神!!!一滴もこぼさずに移せたし、新しいサイもこんなに力強く光ってらぁ!!!」

 

『え…マ?』

 

「マ!!!!」

 

途端、先ほどまで終始いやらしい笑みを浮かべていた死神の顔から、余裕の色が消えていった。

 

『いやー…おかしいな。これあの~、一応できない予定っていうか…あのー、そういう段取りになってたはずなんだけど…その移し替えだって、めっちゃ難しい設定になってたし、できるわけないと思って渡したんだけどなー…っていうか、ついでにぶっちゃけると、それ今度新しくヲタデビューする大学生用に預かってたヤツだからできれば返して欲し…』

 

「バカ言え!へっ、ざまぁ見やがれ!このサイは俺が一生肌身離さず保管するからよ!もうオメェみてぇな気味悪い奴には一生触らせねぇよ!そうと決まればもうこんな所に用はねぇ!あばよ!」

 

そう言って一目散に出口へと走り出す下腹。

 

『ま、待て!それを盗られたら俺は死神協会から怒られる…ッ!』

 

「知ったことか!いい気味だぜ!」

 

『せ、せめて1D代だけでも置いていけ…っ!!ヲタクとしてのマナーを守れっ!』

 

「ふん、どの道もう会う事もねぇだろうからな!冥途の土産にくれてやるか、ほらよっ」

 

(チャリーン)とカウンターに500円玉を放る下腹。

 

『待て!今のGradは1D代600円だ!もう100円置いてけ!待てっ!待て~!!!』

 

 

こうして夏フェスの現場回しで鍛えた自慢の脚力で、いとも簡単に死神を撒いた下腹。

まんまと盗った新しいサイは肌身離さず持ち歩き、今もそのポケットの中から力強い光を放っている。

 

 

・・・

 

 

後日、とうとう待ちに待った日がやってきた。

 

実に数か月ぶりに忍子に会うべくイベに来た下腹。

自己中全開で騒ぎ散らしたライブもそこそこに、ついにお待ちかねの特典会へ。

 

スタッフ(次の方どーぞー)

ゲ「忍子ぉぉおおおお」

忍『あぁ~下腹さぁ~ん、なんでずっと来てくれなかったの?他界しちゃったのかと思って私ずっと泣いてたんだよ?』

「ごめんな…ずっと会いたかったけど会いに来れない理由があって…ってそんなことより!」

『なに?』

「久々にきたらお客さんめっちゃ増えてるじゃん!やっぱ忍子はカワイイからなw俺が来てない間だって、実際そこまで寂しくなかったんじゃ…」

『そんなこと…ないよ…っ…』

「え、忍子、なに泣いてっ…!」

『私、下腹さんが来てくれるのずっと待ってたよ…こんなに応援してくれてる下腹さんのこと武道館に連れていって、『ほらね、下腹さんは死神じゃなかったでしょ?』って言うの、私の夢なんだよ?』

「お、忍子…」 

スタッフ(お時間まもなくでーす)

「忍子…ごめっ…俺…オレっ…」

『もう…しょうがないからぁ、この後ループしてくれたら許すっ♡』

「忍子ぉォぉおおおお♡♡♡」

スタッフ(お時間でーす)

 

こうしてまたも秒でテンションの極地に至った下腹。

ド〇リアさんより赤い顔で喜び勇んで再度列の最後尾へ付くと、ほどなくして再び下腹の番がやってきた。

 

スタッフ(じゃ次の方ここで特典券もらいまーす)

下「あ、はいはい。あれ、どこしまったっけな…」

 

ゴソゴソ…ポロっ…パシャ

 

「ん?」

 

見ると、下腹がポケットから券を取り出した拍子に、使い古しのサイリウムを落としたようだった。

 

そのサイリウムは締まりが緩かったのか、床に落ちた衝撃でキャップの部分が外れ、中から液体がこぼれてしまっていた。

 

「(あれ?このサイリウム…なんだっけ?)」

 

元々オツムもアイコンも鳥頭な下腹。 

自分が落としたサイがなぜポケットに入っていたかなど既にスッカリ忘れていたし、最愛の忍子を前にして、今はそれどころじゃなかった。

 

「あ、すいません!」

 

スタッフ(あ、大丈夫ですよ。こっちで掃除しとくんで)

 

「申し訳ないです、、、じゃ、お言葉に甘えてw」

 

 

そうスタッフに軽く会釈をしたのち、券を渡してから愛しの忍子の前へ。

 

「忍子~♡さっきの話のつづきなんだけどさ~♡」

 

そう浮かれた調子で話しかける下腹を見つめながら、潤んだ瞳と優しい笑みを浮かべつつ、忍子は真っ直ぐこう言った。

 

 

 

 

 

 

『はじめまして!』

 

 【終】

 

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「AISメンバー紹介」使用動画まとめ

 

 

 

全編で使っている「こいしょ!!!」MVについては、ここでの紹介をもって省略します。

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【目次】

 

 

橋本麗愛(はしもとれな)

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関澤朋花(せきざわともか)

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磯前星来(いそまえせら)

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朝熊萌(あさくまもえ)

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島崎友莉亜(しまざきゆりあ)

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栗原舞優(くりはらまゆ)

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徳久陽日(とくひさはるか)

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エンディング

 

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